# 中小M&A白書2026-27年版を読み解く|MAREC編・事業承継M&Aの最新動向と経営者の決断軸
神戸大学大学院経営学研究科の中小M&A研究教育センター(MAREC)が編んだ『中小M&A白書〈2026-27年版〉』が、2026年5月18日に中央経済社から発売されました。発行を後援する日本M&Aセンターのリリースによれば、本書は中小M&Aの実態を学術データで可視化し、経営者・実務家・研究者の三者に共通の議論基盤を提供することを目的としています。
経営者の高齢化が進み、後継者問題が経営の主要テーマに浮上したいま、自社の出口を考える中小企業オーナーにとって、本白書の論点を押さえておくことは打ち手の精度を変えます。本記事では一次情報をもとに、白書の中身と中小企業経営者が取りうる選択肢を、DX経営目線で整理します。
## 中小M&A白書〈2026-27年版〉とは
『中小M&A白書〈2026-27年版〉』は、神戸大学大学院経営学研究科のMAREC(中小M&A研究教育センター)が編集し、中央経済社から刊行された学術ベースの実態分析書です。
・正式名称: 中小M&A白書〈2026-27年版〉
・編者: MAREC(神戸大学大学院経営学研究科 中小M&A研究教育センター)
・発売日: 2026年5月18日(月)
・出版社: 中央経済社
・価格: 2,200円(税込)
・ページ数: 204ページ
・入手方法: 全国書店および中央経済社・大手オンライン書店
執筆陣には内田浩史教授(MAREC副センター長)、忽那憲治客員教授(MARECセンター長)、本田朋史特命准教授、久保雄一郎特命准教授、戸梶奈都子准教授、伍一昌特命助教ら神戸大学の研究者に加え、早稲田大学・近畿大学の協力研究者も参画しています。仲介業界に近い立場ではなく、学術研究者が独立した観点で中小M&A市場を分析している点が、本白書の信頼性を担保しています。
なお、刊行に合わせて2026年6月5日(金)に第5回年次シンポジウムが日本M&Aセンター東京本社でハイブリッド開催され、参加費は無料です。白書を読んだ経営者が、執筆陣の議論に直接触れられる貴重な機会と言えます。
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## 白書が扱う主要テーマと章立て
本白書は前版(2024-25年版)の枠組みを引き継ぎつつ、データ更新と新規章を追加しています。とくに買い手企業側のアンケート分析が新規章として加わったことは、売り手主導で語られがちだった中小M&A論を双方向に拡張する点で意義があります。
・第3章: 中小M&A仲介データ分析(更新版)
・第4章: 買い手企業アンケートデータ分析(新規章)
・第5章: 重要トピック検討(感情価格・経営者保証・仲介業界・PEファンド・政策的措置)
第5章で取り上げられる「感情価格の存在」とは、創業者が会社に抱く愛着が売却価格の合理性を歪める現象を指します。買い手側からは過大評価に見える条件が、なぜ売り手にとって譲れない一線になるのか。これを学術的に検討した章は、価格交渉で行き詰まる経営者と仲介担当者の双方に新しい視点を与えます。
経営者保証の扱いも見逃せません。中小M&Aでは旧経営者の個人保証がディール成立の障害になるケースが多く、政策的にも経営者保証ガイドラインの活用が推奨されてきました。白書は仲介現場のデータからこの実態を裏付けています。
## 経営者高齢化と中小M&Aの位置づけ
白書が前提とする経営環境を理解するうえで欠かせないのが、経営者の年齢構造です。帝国データバンクの調査によれば、2024年の中小企業経営者の平均年齢は60.7歳と、1990年からの統計で34年連続で過去最高を更新しています。
・平均年齢: 60.7歳(2024年、34年連続で過去最高)
・50歳以上: 81.7%
・60歳以上: 51.7%(社長の過半数)
・社長交代時の平均年齢: 68.6歳
・新社長の平均年齢: 52.7歳
一方で、後継者不在率はゆるやかに改善傾向です。60代経営者の不在率は2011年に50%を超えていましたが、2024年には38.1%まで低下しました。これは事業承継M&Aが選択肢として浸透し、第三者承継が現実的な打ち手として受け入れられた結果と読めます。
つまり中小M&Aは、後継者がいない企業の「最終手段」ではなく、経営者が引退時期を主体的にコントロールしながら、従業員と取引先を守るための「戦略的な選択肢」へと位置づけが変わりつつあるのです。本白書はそのトレンドを学術データで裏付ける役割を担っています。
## 中小企業経営者がM&Aを検討すべき判断基準
では、自社のオーナー経営者として「いまM&Aを真剣に検討すべきか」をどう判断すればよいでしょうか。白書の論点と実務の交差から、判断軸を整理します。
第一に、経営者年齢が60歳を超えた時点で、選択肢として常時テーブルに置くべきです。社長交代の平均年齢が68.6歳であることを踏まえると、60歳から準備を始めても10年弱しかありません。M&Aは買い手探しから成約まで通常1年から2年を要するため、決断の遅れは選択肢そのものを失わせます。
第二に、後継者候補の有無を客観視することです。親族内承継・役員承継が現実的でない場合、M&Aを「最後の選択肢」ではなく「並列の選択肢」として扱うことで、廃業による雇用喪失を回避できます。
第三に、DXによる属人化解消の進捗です。経営者個人のノウハウに依存する経営は、買い手が引き継ぎを躊躇する最大の要因になります。業務プロセスの可視化、データ基盤の整備、システムによる引き継ぎ可能化は、それ自体が事業価値を高めると同時に、M&Aの実行可能性を引き上げます。
## 事業承継4つの選択肢を比較する
中小企業経営者が引退時期に選びうる主要な4つの選択肢を、白書の論点を踏まえて比較します。
| 選択肢 | 後継者要件 | 従業員雇用 | 個人保証 | 準備期間目安 | 適する企業 |
|---|---|---|---|---|---|
| 親族内承継 | 子・親族が必須 | 維持しやすい | 後継者へ引継ぎ | 5~10年 | 後継者候補が経営意欲を持つ家業型 |
| 役員・従業員承継(MBO/EBO) | 社内に経営人材必須 | 維持しやすい | 資金調達課題 | 3~5年 | 幹部層が育っている企業 |
| 事業承継M&A(第三者承継) | 不要 | 買い手次第 | 解除交渉可能 | 1~2年 | 後継者不在・事業に競争力あり |
| 廃業 | 不要 | 失われる | 清算で解消 | 6か月~1年 | 事業継続価値が低い |
この4択を並列で比較できる状態にしておくことが、経営者にとっての本質的な備えです。白書はとくに事業承継M&Aの実態をデータで明らかにすることで、感覚で語られてきたこの選択肢に客観性を与えています。
なお、本白書は中小M&Aの全体像を示す入門書ではなく、データに基づく実態分析書です。M&Aの基礎から学びたい経営者には、前版にあたる『中小M&A白書〈2024-25年版〉』も併読すると、データの経年変化を追えます。
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## よくある質問
・Q1: 中小M&A白書〈2026-27年版〉はどこで入手できますか?
全国書店および大手オンライン書店で購入できます。中央経済社・Amazonなどで取り扱いがあります。
・Q2: 経営者本人が読むのに適していますか?
学術書の体裁ですが、章ごとにテーマが独立しており、経営者保証や感情価格など実務で直面するテーマを部分的に読むだけでも価値があります。
・Q3: 第5回年次シンポジウムには参加できますか?
2026年6月5日(金)15:00-18:30、日本M&Aセンター東京本社でハイブリッド開催、参加費は無料です。神戸大MARECの公式申込ページから登録できます。
・Q4: 自社がM&A対象になりうるか、どこで相談すべきですか?
事業承継・引継ぎ支援センター(中小機構運営、各都道府県設置、無料相談)が初回相談に適しています。仲介業者に直接依頼する前の第三者意見として活用できます。
## まとめ
『中小M&A白書〈2026-27年版〉』は、経営者高齢化と後継者問題の長期トレンドが続くなかで、中小M&Aを学術データで読み解く実態分析書です。買い手企業アンケート章の新設、感情価格・経営者保証・PEファンドといった重要トピックの掘り下げは、売り手にも買い手にも新しい議論の素材を提供します。
経営者にとって重要なのは、M&Aを「最終手段」ではなく「並列の選択肢」として常時テーブルに置くことです。判断を遅らせれば選択肢そのものを失います。DXによる業務の可視化と属人化解消は、事業価値を高めると同時に、事業承継M&Aの実行可能性を引き上げる打ち手でもあります。
事業承継・DX・経営課題の最新動向は、DXマスターズマガジンでも毎週発信しています。
