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“SaaSを入れてもExcelは残る”56.6%|中小企業の二重入力を断つ実装ロードマップ

「SaaSを入れたのに、結局Excelで二重入力している」――この声を中小企業の現場で耳にすることが、2026年も止みません。

株式会社オロが2026年5月26日にキーマンズネット経由で公表した調査では、事務系会社員の56.6%が業務上の二重入力を経験。SaaS導入後もExcelを併用している企業の存在が、具体的な比率付きで示されました。

この記事では、中小企業の経営者・業務責任者向けに、オロ調査が示した二重入力の実態と、業務デジタル化を「進めたつもり」で止めないための実装ロードマップを整理します。情報は2026年5月26日時点の公開資料に基づきます。


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オロ調査が示した「二重入力」の実態

株式会社オロは2026年3月18日から3月25日にかけて、全国の経営層・一般職員 計433名を対象に、業務上の二重入力に関する調査を実施しました。結果は2026年5月26日にITmedia キーマンズネットで報じられています。

調査の主な数字は次の通りです。

調査項目 結果
二重入力経験者 56.6%(245人 / 433人)
うち「ほぼ毎日」発生 13.6%
うち「時々」発生 43.0%
SaaS導入後もExcel併用 15.9%
給与計算での二重入力発生率 32.7%
売上・請求金額での発生率 28.2%
勤怠・勤務管理での発生率 26.1%

注目すべきは、二重入力の最大原因が「既存システムが連携していない」23.7%であった点です。「管理方法が異なる」「部署単位での管理方法が異なる」がそれぞれ18.0%で続きました。SaaS自体に問題があるのではなく、SaaSとSaaSの間、SaaSとExcelの間のデータ連携が二重入力を生んでいます。

出典: 株式会社オロ 調査結果(2026年3月18-25日実施 / ITmedia キーマンズネット 2026年5月26日報道)

マジセミの問題提起:「Excelに慣れた現場ほどDXが進まない」

同じタイミングで、マジセミ株式会社が2026年5月26日に「『なぜ、Excelに慣れた現場ほどDXが進まないのか?』というテーマのウェビナーを開催」と発表しました(PR TIMES経由)。

論点として挙げられているのは、Excel熟練者の存在が業務デジタル化を阻害する逆説です。Excelで複雑な集計・帳票・分析をこなせるベテランがいる現場ほど、SaaS導入後も「Excelのほうが早い・正確」となり、新システムへの移行が止まる。“できる人”が現場にいることが、業務デジタル化のボトルネックになってしまう構図です。

中小企業では、Excelに精通した経理担当者・総務担当者が現場の中核を担うことが多く、この問題は構造的に発生しやすい。SaaS導入の判断時に、「Excel熟練者がいる業務ほど慎重に設計する」という逆転の発想が必要です。

参考: マジセミ株式会社 プレスリリース(2026年5月26日 / PR TIMES)

住友電工情報システム「楽々Webデータベース」生成AI機能の動向

業務デジタル化ツール側の進化も加速しています。住友電工情報システムは2026年5月22日、ノーコード型のExcel業務効率化ツール「楽々Webデータベース」のサポートサイトに、生成AIを用いた検索機能を実装したと発表しました。

楽々WebデータベースはExcelファイルをWebアプリ化するノーコードツールで、Excelの配布・収集・集計の作業負荷を軽減する設計。今回の生成AI機能追加により、サポートサイトでの疑問解消が会話形式で進むようになりました。

注目したいのは、「Excelを置き換える」のではなく「Excelの延長線上でWeb化する」アプローチです。Excel熟練者のスキルを温存しつつ、データの一元化と共有を実現する設計は、上記のマジセミ問題(Excel熟練者がDXを止める)への現実的な処方箋になり得ます。

参考: クラウド Watch / Yahoo!ニュース 2026年5月22日報道

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二重入力を断つ実装ロードマップ(中小企業向け)

オロ調査・マジセミ提起・楽々Webデータベース動向を踏まえると、中小企業が二重入力を断つには、「全部リプレース」ではなく「段階的な接続」が現実解です。次の4段階で進めます。

段階1: 二重入力が発生している業務を3つ書き出す

オロ調査の上位3項目(給与計算・売上請求・勤怠)は、多くの中小企業でも上位に来ます。自社の経理・総務に聞き、月何時間が二重入力に費やされているかを具体的な数字で把握します。100時間/月以上なら、年間1,200時間の削減余地があり、投資判断が成立する規模です。

段階2: データの「親」を1つ決める

たとえば顧客マスタの場合、CRMとSaaS会計と請求書発行ツールの3か所に同じデータが存在しがちです。どこを「正」とするかを社内で合意し、他の2か所はAPI連携または定期エクスポートで自動同期する設計に切り替えます。Excelを残す場合も、Excelは「親」ではなく「出力先」にする原則を徹底します。

段階3: 連携ツール(iPaaS)または既存ツールの連携機能を活用

中小企業でも導入できる連携基盤として、Zapier・Make(旧Integromat)・kintoneプラグイン・freee/マネーフォワード連携などが選択肢に挙がります。月数千円~数万円の範囲で、APIを書かずにSaaS同士をつなげられます。連携テストは小規模(1日10件程度)から始め、月1か月運用して安定性を確認してから本番展開します。

段階4: Excelを「補助記憶」に格下げする

最終段階で、Excelは「正のデータ」を持たない補助記憶(一時集計・個人メモ)に役割を限定します。経理担当者にとっては「楽になった」と感じる変化ですが、移行期にはExcel熟練者からの反発も予想されます。「速さ」ではなく「ミスの少なさ・引継ぎやすさ」を評価軸に置き直すコミュニケーションが重要です。

二重入力削減の費用対効果シミュレーション

中小企業30名規模、月100時間の二重入力が発生していると仮定して、削減効果を試算します。

項目 金額・時間
削減対象工数 月100時間(年1,200時間)
時給換算(事務職平均) 2,000円/時
年間削減効果(粗計算) 240万円
連携ツール導入費 初期20万円 + 月額3万円(年36万円)
1年目の純削減効果 240万円 − 56万円 = 184万円
2年目以降の年間効果 240万円 − 36万円 = 204万円

数字は事業特性で大きく変動しますが、二重入力が月50時間以上発生しているなら、ほぼ確実に投資回収できる規模感です。逆に月20時間未満なら、無理に投資せず手動運用の改善(テンプレート整備・チェックリスト化)で済ませる判断も合理的です。

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よくある質問

Q1. Excelを完全に捨てる必要がありますか

ありません。Excelは中小企業の業務において、個人集計・一時的な分析・取引先とのデータ授受という用途で当面残ります。重要なのは「正のデータ」をExcelに置かないことで、運用ルールを変更するだけで多くの二重入力は解消可能です。

Q2. 連携ツール(iPaaS)の導入は情シスがいなくてもできますか

可能です。Zapier・Makeはノーコードで設定でき、kintoneプラグインも管理画面から操作するだけ。ベンダー任せにせず、社内の窓口担当が月1~2時間ずつ触る運用が現実的です。設定が複雑な箇所だけ、SaaSベンダーや認定パートナーに有償サポートを依頼します。

Q3. SaaS同士の連携で気を付けるべき落とし穴は何ですか

「双方向同期」設定です。CRMから会計、会計からCRM、両方を同時に同期する設定にすると、片方の修正がもう片方を上書きする事故が起きます。原則は片方向(親→子)にし、戻し方向は手動承認を挟む設計が安全です。

Q4. Excel熟練者の協力を得るコツはありますか

「Excelスキルが不要になる」ではなく「Excelスキルが正しく活きる場所を作る」と説明することが効果的です。連携後のExcelは、データ抽出・分析・経営報告書作成に集中できる役割になり、熟練者の価値はむしろ上がります。「奪う」ではなく「専門化させる」のメッセージで進めます。

Q5. 補助金は使えますか

IT導入補助金(中小企業庁所管)の対象に、SaaSとSaaSの連携基盤、業務デジタル化ツールが含まれます。補助率は通常枠で1/2、デジタル化基盤導入類型で2/3まで。最新の公募回・上限額は補助金事務局ページで要確認ですが、小規模な投資(数十万円~百万円台)から大型投資まで対応可能な制度設計です。


まとめ:「SaaSを入れた」で止まらない設計に

オロ調査の56.6%という数字は、中小企業の経理・総務担当者が日々感じている疲弊を裏付けるものです。SaaSを導入しただけでは業務デジタル化は完了せず、SaaS同士の連携・データの一元化・Excelの役割再定義までを設計し切って初めて、二重入力は減少します。

判断材料は揃っています。次の経営会議で「自社では月何時間が二重入力に消えているか」を一度数字で把握すること。そこから先のロードマップは、この記事の4段階を当てはめれば社内で書けます。

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