従業員30人の会社でも、サイバー攻撃の被害に遭うケースが急増しています。ランサムウェアやフィッシング詐欺は大企業だけの問題ではなく、セキュリティ対策が手薄な中小企業こそ標的にされやすい実態があります。
「対策の必要性はわかっているが、ツールの導入費用がネックになっている」という経営者に知ってほしいのが、IT導入補助金の「セキュリティ対策推進枠」です。
この記事では、補助率・補助対象ツール・申請の流れを、従業員10~100名規模の中小企業向けにわかりやすく解説します。執筆時点(2026年5月)の情報をもとにしていますので、申請前には必ず最新の公募要領でご確認ください。
セキュリティ対策推進枠とは?経営者にわかる言葉で解説
IT導入補助金には複数の「枠(申請メニュー)」があります。会計ソフトや勤怠管理ツールに使える「デジタル化基盤導入類型」とは別に、サイバー攻撃対策ツール専用の補助として設けられているのが「セキュリティ対策推進枠」です。
この枠の大きな特徴は、IPAが定める「サービスリスト」に掲載されたセキュリティツールに限定される代わりに、SECURITY ACTION(自社のセキュリティ対策を宣言する無料制度)さえ取得していれば申請できる点にあります。
通常の業務効率化ツールとの主な違いを表にまとめます。
| 比較項目 | デジタル化基盤導入類型 | セキュリティ対策推進枠 |
|---|---|---|
| 対象ツール | 会計・請求書・受発注ソフト等 | セキュリティ対策ツールのみ |
| 補助率 | 最大3/4(種別により異なる) | 1/2以内 |
| 補助額の上限 | 最大350万円 | 最大100万円 |
| 主な条件 | gBizIDプライム取得 | gBizIDプライム+SECURITY ACTION宣言 |
※直近の公募実績をもとにした目安です。2026年度の正確な要件は公募要領で必ずご確認ください。
補助対象となるセキュリティツールの種類
セキュリティ対策推進枠の補助対象は、IPAが公表する「サービスリスト」に掲載されたツールに限られます。主なカテゴリは次のとおりです。
・EDR(エンドポイント検知・応答): PCやサーバー上の不審な動作をリアルタイムで検知し、被害の拡大を自動で遮断するツールです。ウイルス対策ソフトでは防ぎきれない高度な攻撃に対応できます。
・多要素認証(MFA): パスワードに加えてスマートフォンへの通知や生体認証を組み合わせ、不正ログインを防ぎます。テレワーク環境でのアカウント侵害対策として最も効果的な手段の一つです。
・メールセキュリティ: フィッシングメール・標的型メールを受信前にフィルタリングします。サイバー攻撃の入り口として最も多く悪用されるのがメールです。
・ウイルス対策(アンチウイルス): マルウェアの侵入を防ぐ基本ツール。現在はクラウド管理型が主流で、複数端末を一括管理できます。
・VPN(仮想プライベートネットワーク): テレワーク時に社内ネットワークへの安全なアクセスを確保します。
・ログ管理・監視: システムへのアクセス記録を一元管理し、インシデント発生時の原因調査を迅速化します。
導入したいツールがリストに掲載されているかは、IT導入補助金公式サイトで必ず事前確認してください。サービスリストは随時更新されるため、申請直前にも最新版を参照することをお勧めします。
補助率・補助額・主な申請要件
直近の公募実績をもとにした概要をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 1/2以内 |
| 補助額 | 5万円~100万円 |
| 対象費用 | ツールの導入費・初期費用・年間利用料(最長2年分) |
| 申請要件① | gBizIDプライムの取得(行政サービス共通ID) |
| 申請要件② | SECURITY ACTION ★1つ以上の宣言(無料・即日可能) |
| 申請要件③ | IT導入支援事業者(登録ベンダー)を通じた申請 |
具体的な数字で見てみましょう。年間利用料20万円のEDRを2年契約で導入した場合、補助額は最大20万円。月換算で実質負担は約8,000円からEDRを導入できる計算です。従業員数30名の会社なら、1人あたり月270円程度でサイバー攻撃への備えを整えられます。
申請の流れ(ステップバイステップ)
1. gBizIDプライムを取得する
まだ持っていない方は最初に取得します。マイナンバーカードがあればオンラインで即日取得可能ですが、書類郵送で申請する場合は審査に約2週間かかります。補助金の申請を検討し始めたら、gBizIDの取得を最優先で着手してください。
gBizIDの詳しい取得手順については「gBizIDプライムの取得方法と補助金申請への活用ガイド」を参照してください。
2. SECURITY ACTIONを宣言する
IPAが運営するSECURITY ACTIONは、自社がセキュリティ対策に取り組む意思を宣言する無料制度です。★1つ(一つ星)の宣言はWebから数分で完了し、宣言証明書(ロゴ画像)をダウンロードできます。申請時に提出書類として使います。
3. IT事業者(登録ベンダー)を選定する
セキュリティ対策推進枠では、IT導入支援事業者として登録されたベンダー経由での申請が必要です。IT導入補助金公式サイトの検索機能で、導入したいツールを扱う登録ベンダーを探しましょう。
ベンダー選定のポイントは3つです。
・サービスリスト掲載ツールを扱っているか(未掲載ツールは補助対象外)
・採択実績があるか(過去の採択件数をベンダーに確認する)
・契約後の保守・サポート体制が明確か
4. 申請書類を作成して提出する
ベンダーと共同で申請書類を作成します。主な必要書類は次のとおりです。
・直近2期分の確定申告書または決算書
・SECURITY ACTION宣言証明書
・導入ツールの見積書
・補助事業の実施計画書
申請はIT導入補助金の申請システム(jGrants)からオンラインで行います。公募締切日の直前は混雑しやすいため、余裕を持って書類を整えておくことをお勧めします。
5. 採択後の手続きと実績報告
採択通知が届いたら、発注・契約・支払いを行います。採択通知の前に発注・支払いを行うと補助対象外になるため、必ず採択後に動き始めてください。ツール導入後は実績報告書を期限内に提出し、審査を経て補助金が口座に振り込まれます。
採択後の手続き詳細については「IT導入補助金 採択後の手続きガイド」も参照してください。
よくある失敗と回避策
失敗①:gBizIDプライムの取得が遅れて申請期限に間に合わない
書類申請の場合、取得まで2週間以上かかることがあります。補助金を検討し始めたら、最初にgBizIDの取得から着手してください。
失敗②:サービスリスト未掲載のツールを契約してしまう
「セキュリティツールなら何でも補助対象」ではありません。IPA公表のサービスリストに掲載されていないツールは対象外です。ベンダーへの確認だけでなく、自分でも公式リストを目視確認しましょう。
失敗③:採択前に発注・支払いをしてしまう
採択通知を受け取る前に動いてしまうと補助金が受け取れません。採択通知メールが届くまで待ちましょう。
失敗④:実績報告の期限を見落とす
採択後の実績報告には提出期限があります。期限を過ぎると補助金が受け取れないケースがあります。採択と同時にスケジュールを確認し、カレンダーに登録しておいてください。
セキュリティ対策についてより詳しく知りたい方は、姉妹サイトセキュリティマスターズ.TOKYOもあわせてご覧ください。
本記事のまとめ
IT導入補助金のセキュリティ対策推進枠を活用することで、EDR・多要素認証・メールセキュリティといったツールの導入費用を最大1/2に抑えられます。
申請の流れをおさらいします。
・gBizIDプライムは補助金検討と同時に取得を始める(書類申請は2週間かかる)
・SECURITY ACTION ★1つの宣言はWebで数分、費用ゼロで完了する
・導入したいツールがIPAのサービスリストに掲載されているか必ず確認する
・採択通知前の発注・支払いは絶対に行わない
・採択後の実績報告期限をカレンダーに登録する
セキュリティ対策を「コスト」としてではなく、「補助金を使った先行投資」として捉え直してみてください。月額8,000円から始められるEDR導入で、万一の被害を数百万円単位で抑制できる可能性があります。
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