社内サーバーの保守契約が終わる時期が近づいている、機器が古くなってきた、電気代や管理コストが気になる。そんな状況の経営者は多いと思います。実際、従業員30名規模の中小企業でも、オンプレミスサーバー(社内設置型サーバー)の維持に年間40万~60万円かかっているケースは珍しくありません。
この記事では、オンプレミスサーバーからクラウドへの移行について、従業員10~100名規模の企業向けに、判断の基準・具体的な手順・費用・使える補助金まで経営者目線で解説します。
オンプレミスサーバーとクラウドの違いとは?
オンプレミスサーバーとは、会社の建物に物理的なサーバー機器を設置して、自社で管理・運用する形態です。電源・冷却・保守・セキュリティのすべてを自社で担います。
クラウドとは、インターネット経由でサーバーや記憶領域・アプリを利用するサービスの総称です。自社でハードウェアを持たず、月額料金を払って「使う分だけ借りる」形態です。
| 項目 | オンプレミスサーバー | クラウド |
|---|---|---|
| 初期費用 | サーバー購入費:30万~100万円 | ほぼゼロ(セットアップ費のみ) |
| 月額費用 | 保守費・電気代・場所代など | サービス利用料のみ(従量課金) |
| 機器の更新 | 5~7年ごとに買い替えが必要 | サービス側が自動更新。利用者は意識不要 |
| 障害対応 | 自社またはベンダー呼び出しが必要 | サービス側で対応(SLAで保証) |
| 拡張性 | ハードを追加購入しないと拡張できない | 画面操作で数分以内に容量増設可能 |
| 場所・電力 | サーバールームまたは専用スペースが必要 | 物理スペース不要 |
最大の違いは「ハードウェアの所有」です。オンプレミスは「買って使う」、クラウドは「借りて使う」。どちらが良いかは使い方によりますが、従業員数100名以下の中小企業であれば、クラウドに軍配が上がることがほとんどです。
移行のメリット|コスト削減と運用負担の軽減
1. ハードウェア費用がゼロになる
オンプレミスサーバーは5~7年ごとに機器を更新する必要があります。サーバー1台あたりの購入費は30万~80万円。中小企業でも2台以上運用しているケースは多く、更新時に60万~160万円の支出が一度に発生します。クラウドに移行すれば、この設備投資が不要になります。
2. 年間の維持費が削減される
サーバーの維持には保守契約費・電気代・空調代・スペース代がかかります。従業員30名の企業が2台のサーバーを運用する場合、概算でこのくらいの費用が発生しています。
| 費用項目 | 年間金額(目安) |
|---|---|
| 保守契約費 | 20万~30万円 |
| 電気代(サーバー+空調) | 10万~18万円 |
| スペース・ラック費用 | 3万~10万円 |
| バックアップメディア・作業費 | 3万~5万円 |
| 合計 | 年間36万~63万円 |
クラウドに移行すると、これらがまるごとなくなります。クラウド側の月額費用(後述)と比較すると、多くのケースで年間20万~40万円のコスト削減が見込めます。
3. 管理の手間がほぼゼロになる
オンプレミスサーバーでは、OSのアップデート・セキュリティパッチの適用・バックアップの確認・障害時の対応を自社(または委託した業者)が担います。クラウドサービスに移行すると、これらは原則としてサービス提供側が対応します。IT専門の担当者がいない中小企業にとって、これは大きな負担軽減です。
具体的な移行の進め方|3ステップ
1. サーバーで動いているものを棚卸しする
まず「今のサーバーで何を動かしているか」を整理します。多くの中小企業のサーバーが担っている役割は、主に次の3種類です。
・ファイルサーバー: 社内共有フォルダ(見積書・契約書・マニュアル等の保存場所)
・業務アプリサーバー: 販売管理・在庫管理・会計ソフトなどの基幹システム
・メールサーバー: 社内メールの送受信・保存
役割ごとに「クラウドで代替できるサービスはあるか」を確認します。ほとんどの用途は既存のクラウドサービスで対応できます。
2. 移行先のクラウドサービスを選ぶ
役割ごとに適切なクラウドサービスがあります。
| サーバーの役割 | 移行先サービスの例 | 月額費用(目安・税別) |
|---|---|---|
| ファイルサーバー | Microsoft OneDrive / Google Drive / Box | 1ユーザーあたり680円~1,360円 |
| メールサーバー | Microsoft Exchange Online / Google Workspace | 1ユーザーあたり680円~1,850円 |
| 業務アプリ | クラウド型ERP・会計ソフト・kintone等 | サービスにより異なる(3,000円~) |
| ファイル+メール一括 | Microsoft 365 Business / Google Workspace | 1ユーザーあたり900円~2,180円 |
従業員30名でMicrosoft 365 Business Basicを全員に付与した場合、月額900円×30名=27,000円(月)=年間324,000円が目安です(2026年5月時点・税別)。各サービスの料金は変動することがあるため、導入前に公式サイトで最新の価格をご確認ください。
3. テスト移行→本番切り替えを行う
いきなり全社一斉に切り替えると、トラブルが起きたときに業務が止まります。次の順番で段階的に進めましょう。
・Step1: 1部署・数名だけでクラウドを先行利用し、問題がないか2週間確認する
・Step2: 全社に展開しながら、旧サーバーとクラウドを並行運用する(1カ月程度)
・Step3: 並行運用期間中に問題がなければ、旧サーバーを停止・撤去する
旧サーバーはすぐに廃棄せず、3カ月は電源を落とした状態で保管することをおすすめします。「クラウドでは対応できない場面があった」という時の保険です。
かかるコストと使える補助金
【コスト】移行にかかる費用の目安
| 費用項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| クラウドサービス初期設定費用 | 5万~20万円(業者委託の場合) |
| データ移行・検証作業費 | 5万~15万円 |
| 社員向けトレーニング費用 | 2万~10万円 |
| 合計(移行時の一時費用) | 12万~45万円 |
自社の情報システム担当者が対応できる場合は費用を大幅に圧縮できます。ITに詳しい社員がいない場合は、IT導入支援を行うコンサルタントや、各クラウドサービスの公式パートナー企業に依頼するのが現実的です。
年間の維持費削減額(20万~40万円)と比較すると、移行コストは1~2年で回収できることが多いです。
【補助金】IT導入補助金の活用
クラウドサービスへの移行にはIT導入補助金(経済産業省)が活用できます。執筆時点(2026年5月)では「デジタル化基盤導入類型」の枠で、会計・受発注・決済・ECに関わるクラウドツールの導入費用に対して最大75%の補助が受けられます。
・補助率: 最大75%(ツール費・初期費用・クラウド利用料1年分が対象)
・補助上限: 最大350万円
・申請要件: gBizIDプライム(法人向けオンライン申請ID)の事前取得が必要
公募回ごとに締め切りが設定されるため、最新情報はIT導入補助金公式サイトで確認してください。
クラウドサービス導入時の補助金については、姉妹サイトクラウドマスター.JPでも詳しく解説しています。
よくある失敗と回避策
失敗1: データ移行で業務アプリが動かなくなる
販売管理システムや会計ソフトがサーバーにインストールされている場合、そのままクラウドに移せないことがあります。まずそのアプリにクラウド版があるか確認し、なければリモートデスクトップ(インターネット経由でPCを遠隔操作する仕組み)経由でアクセスできるよう設定することで回避できます。
失敗2: 移行後にインターネット回線が遅くて使い物にならない
クラウドはインターネット回線に依存します。社内の回線が10Mbps以下など低速な場合、ファイルの開閉が重くなります。移行前に回線速度を確認し、必要に応じて光回線への切り替えや、Wi-Fiアクセスポイントの増設を検討してください。回線費用は月1万円台から対応できます。
失敗3: 社員が新しいサービスを使ってくれない
クラウドに移行しても「共有フォルダに直接ファイルを置く習慣が抜けない」「メールのルールが変わって混乱している」など、現場での定着に時間がかかることがあります。移行後1カ月は週1回の短いQ&Aの機会を設けるなど、サポート体制をとることをおすすめします。
本記事のまとめ
オンプレミスサーバーからクラウドへの移行は、段階的に進めることで業務を止めずに実現できます。
・棚卸し: 現在のサーバーで何を動かしているかを役割別に整理する
・選定: 役割ごとに適切なクラウドサービスを選ぶ(ファイル・メール・業務アプリ)
・移行: 1部署テスト→全社並行→旧サーバー停止の3段階で進める
・費用: 維持費削減分で移行コストは1~2年で回収できることが多い
・補助金: IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)で費用の一部を補填できる
古いサーバーを使い続けることにはコストと障害リスクが伴います。次の機器更新タイミングを迎える前に、クラウド移行の検討を始めてみてください。
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