「ウチみたいな規模で福利厚生なんて必要なの?」——従業員30名前後の中小企業の経営者から、よく聞く言葉です。しかし採用難が続く今、求職者が内定先を選ぶ決め手の一つが「福利厚生の充実度」になっています。
旅行補助・健康診断の追加オプション・育児支援などを自社で整備しようとすると、総務担当者の負担が大きく、コストも読みにくい。そこで注目されているのが、月額1,000円前後/人から使えるクラウド型の福利厚生アウトソーシングサービスです。
この記事では、従業員10~100名規模の中小企業を対象に、クラウド型福利厚生サービスの仕組みと選び方、主要サービス3社の比較、具体的な導入ステップをわかりやすく解説します。
クラウド型福利厚生サービスとは?
クラウド型福利厚生サービス(福利厚生アウトソーシング)とは、宿泊・飲食・育児・健康・自己啓発など多種多様なメニューを、月額定額でパッケージ化して提供するサービスです。
従来の福利厚生整備では、社宅の取得や提携施設との個別契約が必要でした。クラウド型サービスを利用すれば、提供会社がすでに数万件以上の施設・サービスと契約済みで、従業員はスマホやパソコンから会員サイトにログインするだけで恩恵を受けられます。
| 項目 | 自社で福利厚生を整備 | クラウドサービスを活用 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 高い(施設契約・設備投資が必要) | 低い(月額費用のみ) |
| 総務の管理工数 | 月10時間以上(問い合わせ・精算対応) | 月1時間以下(従業員が自分で申込) |
| メニューの幅 | 限定的(自社が契約した施設のみ) | 数万件以上(全国対応) |
| 中小企業向き | △(規模の経済が働きにくい) | ◎(10名から導入可能) |
中小企業が導入する4つのメリット
1. 採用力の向上
求人票に「福利厚生:ベネフィット・ステーション加入(全国140万か所以上のサービスが割引)」と書けるだけで、応募者の印象は変わります。大手と同じサービス名が並ぶことが、企業への信頼感につながるのです。特に20~30代の求職者は福利厚生を比較するツールを使うため、クラウドサービスの加入が選考通過率に直結するケースがあります。
2. 定着率の向上と離職コスト削減
従業員が旅行・育児支援・資格取得補助を実際に使うことで、「この会社で長く働きたい」という気持ちが育ちます。一般的に、従業員1人が離職して新たに採用・育成するコストは100万円以上とされています。定着率が1人分でも改善されれば、福利厚生費の年間投資を大幅に上回るリターンが生まれます。
3. 総務の管理工数を月10時間削減
クラウドサービスは従業員自身がWebで申込・利用するため、総務担当者の対応工数が大幅に減ります。施設への問い合わせ代行や補助金の精算処理がほぼゼロになり、その時間を本来業務に充てられます。
4. 法人税の節税効果
福利厚生費として全額損金算入できるため、法人税の節税になります。従業員30名に月額1,000円のサービスを導入した場合、年間36万円が費用計上でき、実効税率30%とすると約10万8,000円の節税効果があります(税務処理の詳細は顧問税理士にご確認ください)。
主要クラウド型福利厚生サービス比較
2026年7月時点の情報をもとに比較しています。料金・サービス内容は変更される場合があるため、導入前に各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。
| サービス名 | 月額費用の目安 | 主な特徴 | こんな企業に向いている |
|---|---|---|---|
| ベネフィット・ステーション (株式会社ベネフィット・ワン) |
800円~/人・月(税抜) | 業界最大手。提携施設・サービスが140万か所超と最多。育児・介護・自己啓発・健康まで幅広いメニュー。専用アプリで使いやすい | メニューの充実度を最優先したい企業 |
| リロクラブ (リログループ) |
900円~/人・月(税抜) | 旅行・レジャー・外食系の優待に強み。リゾート施設や宿泊施設の割引が充実。全国の中小企業への導入実績も豊富 | 旅行・外食系の利用ニーズが高い社員が多い企業 |
| えらべる倶楽部 (JTBベネフィット) |
900円~/人・月(税抜) | JTBグループの旅行・宿泊優待が圧倒的に充実。国内外ホテルの特別割引が人気。旅行手配のサポートも受けられる | 出張・旅行好きの社員が多い企業 |
3社とも最低利用人数や初期費用の有無がプランにより異なります。10名以下の場合は最低利用料金が設定されているケースがあるため、見積もり段階で確認が必要です。
導入の具体的なステップ
1. 社員ニーズのヒアリング(1週間)
最初に、社員がどんな福利厚生を求めているかを把握します。旅行・育児・健康・資格取得など、優先度の高いカテゴリを5分程度のアンケートで確認しましょう。MicrosoftフォームやGoogleフォームで手軽に実施できます。ここで把握したニーズを比較検討のベースにすると、「使われない福利厚生」という失敗を防げます。
2. 3社に相見積もりを依頼(2週間)
上記3社それぞれに、従業員数・重視するメニューカテゴリ・希望の開始時期を伝えて見積もりを依頼します。各社の担当者がオンラインでサービスのデモ説明をしてくれます。費用だけでなく、管理者向けの利用状況レポートの使いやすさも比較ポイントです。
3. 無料トライアルで実際に使う(1か月)
多くのサービスは1か月程度の無料トライアルを提供しています。社員数名に実際に使ってもらい、「アプリの使いやすさ」「近隣施設の対象店舗数」「実際に使いたいと思うメニューがあるか」を確認します。トライアル期間の利用率が低い場合は、選択肢を変えることも視野に入れましょう。
4. 社内告知と使い方レクチャー(導入月)
契約後は、社内説明会(30分程度)を開いてログイン方法と活用例を共有します。最初の1か月が定着のカギです。実際に使った社員の「お得だった体験談」を社内チャットで共有する仕組みを作ると、利用率が上がりやすくなります。
5. 四半期ごとに利用状況を確認(継続運用)
管理者画面から従業員の利用率レポートを確認できます。全社平均の利用率が30%を下回っている場合は、再度周知を行うか、別のサービスへの乗り換えを検討します。半年で定着しないサービスは思い切って変えることも選択肢の一つです。
コストの目安と費用対効果
| 従業員数 | 月額コスト(1,000円/人で試算) | 年間コスト | 離職1人分の採用・教育コスト回収 |
|---|---|---|---|
| 10名 | 10,000円 | 120,000円 | 約8倍(離職コスト100万円÷年間費用12万円) |
| 30名 | 30,000円 | 360,000円 | 約3倍 |
| 50名 | 50,000円 | 600,000円 | 約1.7倍 |
従業員30名で年間36万円。「定着率が1人分改善される」だけで、採用・教育コストの削減がこれを大きく上回ります。さらに節税効果(約10万円)を加えると、実質負担はさらに下がります。
なお、採用業務全体のデジタル化を進めたい場合は、クラウド型採用管理(ATS)導入ガイドも参考にしてください。
よくある失敗と回避策
・失敗1: 社員が誰も使わない
導入後に周知が不十分で利用率が低迷するのが最多の失敗です。導入後3か月は毎月「使った人からの体験談」をSlackや社内メールで共有する仕組みを作ると定着しやすくなります。
・失敗2: コストが見合わないと気づくのが遅い
利用率が10%以下ではどのサービスも費用対効果が出ません。1か月のトライアルで全社の利用意向を確認してから本契約に進むことが鉄則です。
・失敗3: パートタイマー・業務委託への適用方針が曖昧
正社員だけ対象にするか、パートや業務委託まで広げるかを事前に決めておきます。対象範囲が広いほど費用は増えますが、組織の一体感の向上に繋がります。
・失敗4: 労務管理システムとの連携を考えていない
育児支援・健康診断補助の情報はクラウド型労務管理システムと連携させて管理すると、年末調整や入退社手続きの際の情報整合がスムーズになります。
・失敗5: 「健康経営」への活用を見落とす
経済産業省の「健康経営優良法人」認定申請では、福利厚生の充実が評価項目の一つになっています。クラウドサービスの導入は認定取得への第一歩にもなります。
本記事のまとめ
クラウド型福利厚生サービスは、月額1,000円前後/人から始められる採用・定着コスト削減の実践的な手段です。
・月額費用は従業員30名で年間36万円が目安(節税効果で実質負担はさらに軽減)
・主要3社(ベネフィット・ステーション・リロクラブ・えらべる倶楽部)で相見積もりを取り、無料トライアルで比較する
・導入後の利用率が30%を下回ったら再周知か乗り換えを検討する
・労務管理システムと組み合わせると入退社や年末調整の管理が一段とスムーズになる
「大企業みたいな福利厚生は無理」と思っていた経営者ほど、導入してみると手軽さに驚かれます。まずは1か月の無料トライアルから始めてみてください。
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