MENU

中小企業のクラウド型請求書受取サービス導入ガイド|PDFや紙の仕入請求書を自動入力して経理の月10時間を削減する方法

受け取った仕入請求書を1枚ずつExcelや会計ソフトに手入力している——そんな作業に、毎月どれだけ時間をかけていますか?

取引先が増えるほど、紙・PDFメール・FAXで届く請求書の枚数も増え、入力ミスのリスクも高まります。「クラウド型請求書受取サービス」は、AIとOCR(光学文字認識)の組み合わせで請求書の内容を自動認識し、会計ソフトへの入力を大幅に自動化できるツールです。

この記事では、従業員10~100名規模の中小企業向けに、クラウド型請求書受取サービスの仕組みから主要サービスの比較、導入ステップ、費用の目安まで、実務で役立つ情報をまとめました。

中小企業のクラウド型請求書受取サービス導入ガイド|PDFや紙の仕入請求書を自動入力して経理の月10時間を削減する方法 - 解説

目次

クラウド型請求書受取サービスとは?

クラウド型請求書受取サービスとは、仕入先から届く請求書(紙・PDF・電子データ)を受け取り、AIやOCR(光学文字認識)技術で内容を自動読み取りして、クラウド上で保管・会計ソフトに連携するサービスです。

従来の手動処理との違いを整理すると、次のようになります。

処理工程 導入前(手動) 導入後(クラウドサービス)
受け取り 郵便・FAX・メールで各担当者が受領 専用メールや郵送代行サービスで一元受領
データ入力 担当者が手入力(1枚5~10分) AIが自動読み取り(目視確認のみ)
保管 紙ファイリングまたはPDF手動保存 クラウドに自動保存(電子帳簿保存法対応)
会計連携 手動で仕訳入力 仕訳データを会計ソフトへ自動インポート
照合 紙と帳票を目視で突合 システム上で発注データと自動照合

ポイントは、「担当者がゼロから入力する」工程をなくし、「AIの読み取り結果を確認して承認するだけ」に変えることです。入力ミスの削減と処理スピードの向上が同時に実現できます。

なお、電子帳簿保存法の改正により、電子で受け取った請求書はその電子データのまま保存する義務があります。クラウド型請求書受取サービスはこの要件を満たす設計になっているものが多く、法的なリスク回避の観点からも導入価値があります。

導入のメリット——数字で見るROI

従業員30名規模で月100枚の仕入請求書を処理している企業を例に、費用対効果を試算してみます。

項目 導入前 導入後
請求書1枚あたりの処理時間 約8分(手入力・ファイリング含む) 約1分(目視確認・承認のみ)
月間処理時間(100枚) 約800分(約13時間) 約100分(約1.7時間)
月間削減時間 約11時間
入力ミスによる差異調査 月2~3件(各30分) ほぼゼロ
請求書の検索・取り出し 月1~2時間(紙ファイルを探す) クラウド検索で数秒

月100枚規模であれば、合計で月10~13時間の削減が見込めます。時給換算2,500円の経理担当者であれば月2.5~3万円以上のコスト削減に相当します。サービス利用料(月額5,000~1万円程度)を差し引いても、導入初年度からコスト回収が可能です。

数字には表れにくいメリットとして、次の効果も見逃せません。

・月末・月初の残業減少: 締め処理が集中する時期でも入力作業がないため、業務が平準化されます
・テレワーク対応: 紙の請求書を会社に取りに行く必要がなくなり、経理担当者も在宅勤務が可能になります
・インボイス制度への対応: 適格請求書(インボイス)かどうかの自動チェック機能を持つサービスも増え、消費税の仕入税額控除の管理が楽になります

主要サービスの比較

2026年9月時点で中小企業への導入実績がある4つのサービスを比較します(執筆時点の情報です。最新の料金・機能は各公式サイトでご確認ください)。

サービス名 特徴 月額費用の目安(税抜) 向いている企業
invox受取 AIによる高精度読み取り。紙郵便の代行受領機能あり。freee・マネーフォワード・弥生との連携対応 5,500円~(請求書50枚まで) 紙請求書が多く、会計ソフト連携を重視する企業
バクラク請求書受取 AI-OCRと仕訳自動化が強み。申請・承認ワークフローも内包。発注データとの突合機能あり 小規模プランは要問い合わせ。標準は3万円~ 稟議・承認フローもまとめてデジタル化したい中規模企業
Bill One(Sansan) 紙・PDF・電子データを一元管理。メール受取・郵便代行あり。Sansanブランドの信頼性 1万円~(枚数・ユーザー数による) Sansanで名刺管理をしている企業、取引先との関係管理を重視する企業
マネーフォワード クラウド請求書受取 マネーフォワード クラウド会計・経費精算との統合利用が可能。既存ユーザーなら追加コストを最小化できる 既存プランに含まれる場合あり(別途確認) マネーフォワード クラウドシリーズを既に導入している企業

選び方の3つのポイントを押さえておきましょう。

・受け取る請求書の形式: 紙が多い場合は郵便代行受領機能の有無を確認する
・使用中の会計ソフトとの連携: freee・マネーフォワード・弥生との連携可否を最初に確認する
・月間処理枚数: 枚数単価制か定額制かで費用対効果が変わるため、まず月間枚数を数えてから選ぶ

具体的な導入ステップ

1. 現状の受取フローを棚卸しする

まず、自社に届く仕入請求書の実態を1か月分把握します。「月何枚届くか」「紙・PDF・電子データの割合」「主な仕入先の送付方法」を整理すると、サービス選定の精度が上がります。

現状把握のチェックリストです。

・月間請求書受取枚数(紙・PDF・EDIそれぞれの内訳)
・主な仕入先10社の請求書送付方法(郵便・FAX・メール添付等)
・使用中の会計ソフト名とバージョン
・現在の処理担当者数と1枚あたりの平均処理時間
・電子帳簿保存法の現在の対応状況

2. 無料トライアルで候補を絞る

主要サービスの多くは30日間の無料トライアルを提供しています。実際の請求書データを使って読み取り精度と操作性を確認します。自社でよく使う請求書フォーマット(手書きや旧来の帳票形式)での読み取り精度が特に重要です。

トライアルで確認すべき点です。

・AI読み取り精度(金額・日付・取引先名の正確さ)
・会計ソフトへのエクスポート形式(CSV・直接連携の使いやすさ)
・紙請求書の受領フロー(スキャン送信か、郵便代行か)
・管理画面の操作感(経理担当者が日常的に使えるか)
・インボイス制度への対応状況(適格請求書番号の自動確認機能の有無)

3. 仕入先への案内と移行方針を決める

「紙での請求書送付をPDFメールに切り替えてもらえるか」主要な仕入先に確認します。大手取引先はPDF送付に切り替えてもらえることが多いですが、小規模な仕入先は紙のまま続く可能性があります。

そのため、「紙は郵便代行で受け取り、電子はメールで受け取る」というハイブリッド運用を最初から想定しておくと現実的です。無理に仕入先の運用を変えようとすると関係悪化につながるため、どちらの形式にも対応できるサービスを選ぶことが重要です。

4. 本番移行と社内ルールの整備

トライアルで問題がなければ本番移行に入ります。移行時に決めておくべきルールは次のとおりです。

・請求書受取の専用メールアドレスを1本に統一する(担当者の個人アドレスに送らせない)
・AI読み取り後の「目視確認・承認」担当者を明確にする
・会計ソフトへの仕訳入力タイミング(例: 週1回一括インポート)を決める
・紙で届いた場合のスキャン・投函ルールを決める
・保存期間と削除ルールを電子帳簿保存法の要件に沿って定める

かかるコストと使える補助金

クラウド型請求書受取サービスの月額費用は、処理枚数とサービスによって異なります(2026年9月時点の参考値です)。

月間処理枚数の目安 費用感(月額・税抜) 費用対効果の目安
~50枚(小規模) 3,000~8,000円 月5時間削減(時給2,500円換算で月12,500円節約)
51~200枚(中小規模) 8,000~2万円 月10~20時間削減(月25,000~50,000円節約)
201~500枚(中規模) 2万~5万円 月30時間以上削減(月75,000円超の節約)

初期費用は多くのサービスで無料~3万円程度です。

IT導入補助金の活用について:クラウド型請求書受取サービスは、IT導入補助金の「デジタル化基盤導入類型」の対象ツールに登録されているものがあります(執筆時点)。補助率は最大75%(上限150万円)のため、自己負担を大幅に下げることが可能です。詳細はIT導入補助金 デジタル化基盤導入類型の解説記事をご覧ください。

よくある失敗と回避策

失敗1: AI読み取り精度への過信でミスが発生する

AIのOCR精度は高いですが、100%ではありません。金額の桁や消費税区分を誤認識することがあります。導入初期は担当者が全件確認し、精度が安定してから確認頻度を段階的に下げていく運用が安全です。

失敗2: 紙請求書が旧ルートで届き続ける

「以前は○○さんが受け取っていた」という慣習が残り、請求書が経理部門ではなく営業担当者のデスクに届いてしまうケースがあります。全仕入先に「請求書送付先の変更案内」を送ること、郵便物の開封・スキャン担当者を明確にすることが重要です。

失敗3: 電子帳簿保存法の保存要件を満たせていない

「クラウドに保存しているから大丈夫」と思っていても、検索要件(日付・金額・取引先名での検索ができること)を満たしていない場合があります。導入するサービスが電子帳簿保存法のスキャナ保存・電子取引保存要件に対応しているかを導入前に確認してください。詳しくは電子帳簿保存法対応ガイドを参考にしてください。

失敗4: 会計ソフト連携の設定でつまずき、二重入力が続く

「クラウドには保存できたが、会計ソフトへの仕訳はやはり手入力している」という状況は珍しくありません。トライアル段階で必ず会計ソフトへのエクスポート~インポートの一連の流れを確認し、本番移行前に連携を完成させましょう。freee会計やマネーフォワード クラウド会計など主要ソフトとの連携は、多くのサービスが対応済みです。

中小企業のクラウド型請求書受取サービス導入ガイド|PDFや紙の仕入請求書を自動入力して経理の月10時間を削減する方法 - まとめ

本記事のまとめ

クラウド型請求書受取サービスは、経理の「入力する」作業を「確認する」作業に変えるツールです。月100枚の請求書を処理している企業であれば、月10時間以上の削減と入力ミスの大幅減が期待できます。

・選び方の基準: 月間枚数・受け取り形式(紙/PDF)・使用中の会計ソフトとの連携の3点
・主要サービス: invox受取、バクラク請求書受取、Bill One(Sansan)、マネーフォワード クラウド請求書受取
・費用感: 月3,000~2万円(枚数による)。IT導入補助金が使える可能性あり
・導入の進め方: 現状棚卸し → 無料トライアル → 仕入先調整 → 本番移行の4ステップ

まず1か月間の仕入請求書受取枚数を数えてみてください。月50枚を超えていれば、サービス利用料よりも削減できる時間コストの方が大きくなります。セキュリティや電子帳簿保存法への対応も含めて、クラウド型請求書受取は中小企業の経理DXで最も手軽に始められる施策のひとつです。

PR

担当者になったら知っておきたい 中堅・中小企業のための「DX」実践講座(船井総合研究所デジタルイノベーションラボ)

請求書受取から会計連携まで、バックオフィスのデジタル化を段階的に進めるための実践知識をまとめた一冊。従業員30~100名規模の企業が現場でつまずきやすいポイントを丁寧に解説しています。

関連記事をもっと読む

同じテーマの記事をまとめています。あわせて読みたい記事はこちらからご覧いただけます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次