「うちはアナログだからDXは無理」と諦めている中小企業の経営者に届けたい事例があります。京都の手芸用品卸・EC事業を手がける株式会社ハマヤが、在庫管理も発注も電話と電卓と手書き伝票で回していた状態から、2年で営業利益20%アップを実現しました(出典: ITmedia エンタープライズ/Yahoo!ニュース)。
同じ日にIPA「DX推進指標2025」で全社規模でDXができている企業はわずか3%という調査結果が出ましたが、ハマヤの事例は「残り97%側でも、身近な業務改善の積み上げで利益体質を変えられる」ことを示す貴重な実例です。本記事では、中小企業のDX伴走支援を続けてきた立場から、この事例の何がすごいのか、なぜ多くのアナログ企業が同じ道をたどれないのか、3つの壁と2つの注意点を整理します。
ハマヤの事例で確認できる事実
まず一次情報で確認できた範囲を整理します。手芸用品卸・ECという、ITとは縁が薄そうな業種で達成された数字なので、自社の業種と比べて「うちにもできるかも」を判断する材料にしてください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社 | 株式会社ハマヤ(京都府京都市) |
| 業種 | 手芸用品の卸売およびEC販売 |
| DX期間 | 約2年 |
| 成果 | 営業利益20%アップ |
| 主な電子化対象 | 在庫管理/発注管理/入荷管理/電話でのやり取り→記録システム/電卓→計算システム/手書き伝票→電子化/データ一元化 |
注目すべきは、DXの中身が「最新AI導入」ではなく、卸売業の毎日の業務そのものを電子化・一元化したという地味な積み上げだった点です。中小企業のDX支援現場では「派手なシステム刷新よりも、毎日触る業務を一つずつデジタルに置き換えるほうが利益に効く」というのが定説で、ハマヤの結果はその定説を裏付けています。
なぜ「電話と電卓と手書き」のままでは利益が伸びないのか
電話で受発注、電卓で在庫計算、手書きで伝票を回している会社では、業務の三重コストが発生します。第一にベテラン担当者の頭の中にしか情報がなく、属人化が進みます。第二に同じ情報を何度も書き写すため、転記ミスと二重入力の工数が積み上がります。第三に経営者がリアルタイムの在庫・発注状況を把握できず、判断が後手に回ります。ハマヤのDXは、この三重コストを一つずつ剥がしたと読み解けます。
アナログ企業がDXで利益を出すまでの3つの壁
ハマヤの記事の続きは未公開部分があり、永井執行役員が語った「3つの壁・2つの注意点」の具体内容は本記事執筆時点で一次確認できていません。ここでは中小企業のDX支援現場で実際によく見る3つの壁を整理します。ハマヤの事例も恐らくこの構造の中で乗り越えられたはずです。
壁1: 「うちはアナログだから無理」の心理ブロック
最大の壁は技術ではなく経営者と現場の心理です。「ITは難しい」「うちには合わない」「年配の社員が拒否する」という思い込みが、検討の入り口を閉じてしまいます。ハマヤのように電卓と手書きで回していた会社が2年で結果を出したという事実は、この心理ブロックを崩す最強の材料になります。
壁2: 業務プロセスを変えずにツールだけ入れてしまう
kintoneやMicrosoft 365を契約しても、紙伝票と並行運用したまま「便利だけど結局二重入力が増えた」となるパターンです。ハマヤの事例で重要なのは「電話→記録システム」「電卓→計算システム」「手書き伝票→電子化」と、業務のやり方そのものを置き換えた点です。ツール導入とプロセス変更はワンセットで設計しなければ利益には繋がりません。
壁3: データが部門ごとに分断されて経営判断に使えない
営業はExcel、在庫は手書き、経理は弥生といったように、部門ごとに別々のツールを使っていると、全社の数字が一枚の画面で見えません。経営者が判断する材料がバラバラに散らばっているため、意思決定が遅れます。ハマヤが取り組んだ「データの一元管理と活用」は、この分断を解消する核心部分です。
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中小企業がハマヤの真似をする際の2つの注意点
事例を真に受けて自社に当てはめようとすると、見落としやすい落とし穴があります。中小企業のDX伴走で繰り返し見てきた失敗パターンから、最低限押さえておきたい2点を挙げます。
注意点1: 営業利益20%アップは「2年の積み上げ」の結果
営業利益20%アップという数字は、2年間の継続的な業務改善が積み重なった結果です。半年で結果が出ると期待してDX投資をすると、初年度に「コストばかりかかって何も変わらない」と感じて頓挫します。少なくとも初年度は基盤整備の期間と割り切り、2年目から利益貢献を測る覚悟が必要です。
注意点2: 業種・規模・既存業務によって最適解は変わる
ハマヤは手芸用品の卸・ECという、在庫品目数が多くSKU管理が利益に直結する業種です。同じ手法を製造業のラインや建設業の現場にそのまま当てはめても、効果の出方は違います。「電子化すべき最も効果の大きい業務はどこか」を自社の利益構造から逆算する作業を、必ず最初にやることが重要です。
明日から経営者が打てる3つの現実的な一手
事例を読んで終わりにしないために、明日から動ける具体的な3つのアクションを提示します。
| 順序 | アクション | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | 「電話・電卓・手書き」が残っている業務を全て書き出す | 電子化の候補リストを作る。多くの場合10~30個出てくる |
| 2 | その中から「毎日触る」かつ「数字管理に直結する」業務を1つ選ぶ | 最初の電子化対象を絞る。在庫・受発注・売上集計が筆頭候補 |
| 3 | 1ヶ月で1業務だけ電子化して、ベテラン担当者と一緒に運用 | 属人化を解消しつつ現場の納得感を作る。次の業務に展開できる土台になる |
この順序で進めれば、初年度に小さな成功体験を積み、2年目から利益貢献が見えてくる流れを作れます。ハマヤが2年で20%アップを達成したのも、おそらくこの種の小さな積み上げの先にあった結果です。
よくある質問
Q1. 従業員10人規模でもハマヤと同じことができますか?
業務の本数が少ない分、むしろ取り組みやすい規模です。重要なのは「経営者自身がやる気を持って関わる」ことで、規模の大小は決定要因ではありません。kintoneやfreeeのような中小企業向けクラウドツールは、10人規模から導入できる料金体系になっています。
Q2. ベテラン社員が「今のやり方で十分」と拒否します。どうすれば?
ベテランほど業務知識を持っているため、敵に回さず味方にすることが鉄則です。「あなたの仕事を奪うのではなく、あなたしか知らない情報を会社の財産として残したい」と伝え、最初の電子化作業に主担当として関わってもらうのが効果的です。ハマヤのような卸売業でも、ベテラン担当者の発注勘や在庫感覚が電子化されたデータと組み合わさることで、利益貢献が大きくなります。
Q3. DX投資の初期費用はいくらくらい見ておくべきですか?
従業員10~30人規模で、まずは月額数万円のクラウドサービス(kintone、freee、Microsoft 365等)から始めるのが現実的です。年間で50万~100万円程度の予算を見ておくと、業務1~2本の電子化と運用支援が回ります。IT導入補助金2026を活用すれば、ツール費用の最大3/4が補助対象になるため、自己負担はさらに下がります。
Q4. IT担当者がいない会社でも進められますか?
進められますが、自治体のDX伴走支援や認定支援機関、地域のITコーディネーターを活用するのが現実解です。一人で抱え込まずに、外部の伴走者と一緒に進めることで、ハマヤ規模の成果に近づけます。
本記事のまとめ
ハマヤの「2年で営業利益20%アップ」は、最新AIや派手なシステム刷新ではなく、電話・電卓・手書き伝票を一つずつ電子化していった地味な積み上げの結果です。中小企業のDXは、身近な業務改善から始まる、というメッセージを数字で示してくれた貴重な事例といえます。3つの壁(心理ブロック・プロセス未変更・データ分断)を意識し、2つの注意点(2年スパン・業種別最適化)を踏まえれば、自社でも同じ方向に動けます。明日からの一手は「電話・電卓・手書きが残っている業務を全部書き出す」ことから。
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