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ジョブ型の次「スキルベース組織」とは

「ジョブ型を導入したのに、思ったほど人がうまく回らない」。大手企業の人事から、そんな声が漏れ始めています。職務を厳密に定義して人を当てはめるジョブ型は、変化の速い時代に「職務記述書に書いていない仕事を誰がやるのか」という新たな壁にぶつかりました。そこで次の波として注目されているのがスキルベース組織です。

この記事は、中小企業の経営者・人事担当者に向けて、スキルベース組織とは何か、なぜジョブ型の次と言われるのか、そしてGoogle・富士通など先行企業の実践から自社が何を学べるのかを、人材戦略の視点で整理します。情報は2026年5月時点の公開資料に基づきます。

ジョブ型の次「スキルベース組織」とは - 解説

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スキルベース組織とは何か

スキルベース組織とは、仕事を「ジョブ(職務)」のかたまりではなく、もっと細かい「タスク(作業)」とそれに必要な「スキル」に分解し、社員一人ひとりが持つスキルとマッチングさせて人を配置する考え方です。

ジョブ型では、ある職務に必要なスキルをすべて備えた人を1人探して当てはめます。スキルベース組織では、必要なスキルが10種類あるとき、5種類を持つ人2人や4種類を持つ人3人を組み合わせて業務を回すこともできます。職務という箱に人を押し込むのではなく、スキルという部品で仕事を組み立てる発想です。

この考え方が支持されるのは、技術や事業の変化が速く、職務の中身が短期間で書き換わるからです。EYの整理では「身につけたスキルの3分の1は4年で時代遅れになる」とされ、固定的な職務定義だけでは追いつけなくなっています。

出典: EY Japan「スキルベース組織」関連レポート(2025年)

なぜ「ジョブ型の次」と言われるのか

日本企業の多くは、年功序列の弊害を是正するためにジョブ型へ舵を切りました。職務を定義し、その職務に見合う報酬を払う。考え方としては合理的です。しかし運用してみると、いくつかの限界が見えてきました。

第一に、職務の境界が硬すぎること。職務記述書に書かれた範囲しか動けないと、新規事業や部門横断のプロジェクトで「担当が決まらない仕事」が生まれます。第二に、人材の塩漬けです。ある職務に固定されると、本人が別の分野で活かせるスキルを持っていても発見されません。第三に、採用の難易度。必要なスキルをすべて満たす完璧な1人を探すのは、人手不足の時代にはほぼ不可能です。

スキルベース組織は、これらの限界を「スキル単位で人と仕事を結び直す」ことで乗り越えようとします。ジョブ型を否定するのではなく、その先で運用を柔らかくする発想です。

観点 ジョブ型 スキルベース組織
人を当てはめる単位 職務(ジョブ) スキル・タスク
採用の考え方 職務を満たす1人を探す 不足スキルを複数人で補う
配置の柔軟性 職務に固定されやすい プロジェクト単位で流動的
変化への対応 職務改定に時間がかかる スキルの足し引きで対応

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スキルベース組織の教科書 ジョブ型人材マネジメントのその先へ(EY Japan ピープル・コンサルティング 著/鵜澤慎一郎 監修/日本能率協会マネジメントセンター)

「HRアワード2025」書籍部門に入賞した、スキルベース組織の体系的な入門書。概念から導入ステップまで一冊で押さえたい人事担当者に向きます。

先行企業の実践から学べること

スキルベース組織は概念論ではなく、すでに動いている実践です。

富士通:社内公募とスキル可視化の組み合わせ

富士通はジョブ型人材マネジメントを進めるなかで、社内公募(ポスティング)制度を大きく広げました。同社の公開資料によれば、2020年4月のポスティング拡大から3年間で応募者は延べ約2万人、実際に異動した人は約7千人に上ります。国内では年間約3,000人が社内公募で異動しています。あわせて、社員のスキルを「バッジ」として可視化し、誰がどのスキルを持つかを見える化する仕組みも整えています。職務に縛りつけるのではなく、スキルと意欲で人が動く仕組みづくりが進んでいます。

GoogleなどグローバルIT企業:内部の人材市場

GoogleをはじめIBM・マイクロソフト・アマゾンといったグローバルIT企業は、従業員のスキルを可視化し、プロジェクト単位で最適な人材を集める体制を整えています。社内に「タレントマーケットプレイス」と呼ばれる人材市場をつくり、現場のニーズと社員のスキルを自律的に結びつける手法です。英ユニリーバやHSBC、独シーメンスなども同様の取り組みに資源を投じています。

日本の製造業:適格人員の管理から

川崎重工業は2021年からスキル管理の仕組みを導入し、航空宇宙部門の約5,000人規模で運用を広げています。品質規格に対応した「適格な人員計画」を、スキルを起点に管理する動きです。製造業では、誰がどの工程を担えるかというスキルの見える化が、品質と安全に直結します。

中小企業がスキルベース組織から取り入れられること

「これは大手の話で、うちには関係ない」と感じるかもしれません。しかし、スキルベース組織の本質は大規模なシステム導入ではなく、「職務ではなくスキルで人を見る」という視点の転換です。ここは従業員30名の会社でも今日から取り入れられます。

ひとつめは、社員のスキルの棚卸しです。「経理担当」という肩書ではなく、その人が実際にできること(仕訳、資金繰り表作成、補助金申請書の作成、Excel関数、取引先折衝)を書き出してみる。すると、肩書では見えなかった戦力が浮かび上がります。

ふたつめは、兼務と応援の設計です。中小企業はもともと一人が複数の役割を担っています。これを「仕方なくの兼務」ではなく「スキルに基づく意図的な配置」として捉え直すと、誰に何を任せるかの判断が明確になります。

みっつめは、採用基準の見直しです。「完璧な1人」を待つのをやめ、「自社に足りないスキルは何か」を起点に、そのスキルを持つ人や育てられる人を探す。これだけで、人手不足下の採用がぐっと現実的になります。

大手のような大規模なタレントマネジメントシステムは要りません。スキルで人を見る視点さえ持てば、中小企業の機動力はむしろ大手を上回ります。経営者が全社員の顔と仕事を把握できる規模だからこそ、スキルと仕事の結び直しは速く回せます。

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よくある質問

Q1. ジョブ型を入れていない会社でも関係ありますか

関係あります。スキルベース組織は「職務ではなくスキルで人を見る」という考え方なので、ジョブ型の導入有無に関わらず取り入れられます。むしろ職務定義が緩い中小企業のほうが、スキル起点の配置に切り替えやすい面があります。

Q2. スキル管理のためにシステムは必須ですか

必須ではありません。まずは表計算ソフトで社員のスキルを書き出すだけでも棚卸しは始められます。規模が大きくなって管理が追いつかなくなった段階で、専用ツールの導入を検討すれば十分です。

Q3. 中小企業で始める最初の一歩は何ですか

社員一人ひとりが「肩書ではなく実際にできること」を3~5個書き出すところから始めます。経営者自身もやってみると、誰にどの仕事を任せられるかの解像度が一気に上がります。

ジョブ型の次「スキルベース組織」とは - まとめ

本記事のまとめ

スキルベース組織は、ジョブ型が抱えた「職務の硬さ」「人材の塩漬け」「採用の難しさ」を、スキル単位で人と仕事を結び直すことで乗り越える人材戦略です。富士通の社内公募とスキル可視化、Googleなどの社内人材市場、川崎重工業のスキル管理は、いずれもこの発想の実践です。

中小企業に必要なのは大規模なシステムではなく、「職務ではなくスキルで人を見る」という視点の転換だけです。社員のスキルを書き出すことから、自社の人材戦略の組み替えを始めてみてください。

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