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中小企業の議事録電子化ガイド|株主総会・取締役会の書類をペーパーレスにして保管・共有の月8時間を削減する方法

「議事録を毎回印刷して製本して、ファイルに綴じて保管棚に並べる——これが会社設立以来の習慣になっている」という中小企業の経営者・総務担当者は少なくありません。

株主総会や取締役会の議事録は会社法によって定められた法定書類です。保管義務を守りながら管理するのは当然ですが、紙での運用は思った以上に手間がかかります。印刷・製本・役員への配布・ファイリング・保管場所の確保——これらを合計すると、年間では数十時間規模の作業になっていることも珍しくありません。

この記事では、中小企業(従業員10~100名規模)が議事録の電子化を進める方法を、会社法の保管要件・ツールの選び方・導入手順まで、経営者にわかる言葉で解説します。うまく進めれば、月8時間相当の書類管理作業を削減しながら、役員間の共有もスムーズになります。

目次

株主総会・取締役会議事録とは?会社法が求める保管義務

株式会社は法律によって以下の議事録を作成・保管しなければなりません。

株主総会議事録: 会社法318条に基づき、本店に10年間・支店に5年間(写し)の保管が義務
取締役会議事録: 会社法371条に基づき、本店に10年間の保管が義務
監査役会・各種委員会の議事録: 種別に応じてそれぞれ保管義務あり

重要なのは、会社法はすでに電子的な記録による保管を認めている点です(会社法318条2項、会社法施行規則72条等)。PDFや電子ファイルで適切に管理していれば、紙の原本を用意し続ける必要はありません。ただし「改ざんが困難な形式での保管」「真正性の確保」が要件として求められます。

また、株主や債権者から議事録の閲覧・謄本交付の請求があった場合には速やかに対応できる体制を整えておく必要があります。これは電子化されていても変わりません。

議事録を電子化する3つのメリット

紙の議事録管理を電子化したとき、中小企業で具体的に何が変わるのかを整理します。

管理工数の削減: 印刷・製本・ファイリングにかかる時間が月平均8時間から1時間以下に短縮できます。年間で80時間超の業務時間を他の仕事に回せます。
検索・共有が即座に可能: 紙の場合「あの議事録はどのファイルだったか」という探索に数分かかりますが、クラウドなら数秒で特定できます。役員や顧問弁護士・税理士との共有もURLひとつで完結します。
保管スペースとコストの削減: 10年分の議事録を紙で保管するとバインダー数十冊分の棚スペースが必要になります。電子化すれば実質ゼロになり、オフィス移転時の書類移送コスト(1回あたり数万円)も発生しません。

作業項目 電子化前(紙) 電子化後(クラウド)
議事録作成・印刷 月5時間(作成+印刷+確認) 月2時間(作成のみ)
製本・ファイリング 月2時間 月0時間
役員・顧問への配布 月1時間(郵送・手渡し) 月10分(URL送付)
過去の議事録検索 数分~10分/回 数秒/回
保管スペース 棚1台分(10年分) 実質ゼロ

議事録電子化の具体的な進め方

4つのステップで進めると、スムーズに導入できます。

1. 現状の議事録管理をリスト化する

まず自社で作成・保管が必要な議事録の種類を洗い出します。一般的な中小企業(株式会社)では株主総会議事録と取締役(会)議事録の2種類が中心です。合同会社の場合は社員総会議事録が対象になります。

棚卸しで確認すべき点をまとめます。

・現在の保管場所とファイル数(何年分あるか)
・作成から承認・保管までの現在のフロー(誰が作成し、誰が確認・押印しているか)
・関係者(役員・顧問弁護士・税理士・株主)の数と共有方法
・現在の作業にかかっている時間(具体的な数字を計測する)

この棚卸しをすることで、電子化後に何時間削減できるかが可視化でき、社内の承認も得やすくなります。

2. ツールを選定する

議事録の電子化に使えるツールは大きく2種類に分かれます。

汎用クラウドストレージ: Microsoft SharePoint(Microsoft 365)やGoogle Drive(Google Workspace)で議事録フォルダを作成する方法です。すでに導入済みであれば追加コストゼロで始められます。アクセス権限の設定や版管理機能も標準で使えます。
文書管理専用システム: 改ざん履歴管理や監査ログが必要な場合は、文書管理システム(DMS)を検討します。DocuWare、楽楽ナレッジ、DirectCloudなどが中小企業でも導入しやすい選択肢です。

多くの中小企業では、Microsoft 365またはGoogle Workspaceを使った共有フォルダ管理で十分です。フォルダ構造は「会議種別 > 年度 > 開催日」の階層にすると検索しやすくなります。文書管理の仕組みをより体系的に整えたい場合は、中小企業の文書管理システム導入ガイドもあわせて参考にしてください。

3. 電子署名と承認フローを決める

議事録には役員の署名または記名押印が必要です(会社法の要件)。電子化する場合は、電子署名を活用するか、紙署名後にスキャンして保管するかの2択から自社の状況に合った方法を選びます。

方法A(電子署名): 電子契約サービス(クラウドサイン・DocuSign・Adobe Acrobat Signなど)を使い、役員が各自の端末で電子署名する。改ざん防止の観点から最も確実で、完全ペーパーレスを実現できる。月額費用: 数千円~数万円。
方法B(スキャン保管): 役員が紙に署名・押印した後、スキャンしてPDF化してクラウドに保管する。コストはほぼゼロだが、原本(紙)も一定期間保管するケースが多く、完全なペーパーレスにはならない。ただし会社法の電子保存要件を満たす運用は可能。

電子署名の活用については、中小企業のハンコレス化ガイドでより詳しく解説しています。議事録と合わせて契約書類の電子化も進めたい場合は電子契約サービス導入ガイドも参考にしてください。

4. 保管ルールと社内周知

電子化後に「どこに何を保管するか」のルールを文書化しておかないと、担当者が変わったときに混乱します。以下の項目を社内ルールとして決めておきましょう。

・保管場所(フォルダパスまたはクラウドリンク)
・ファイル名の命名規則(例: 20260320_株主総会議事録.pdf)
・アクセス権限を持つ人のリストと更新タイミング
・バックアップの取得方法と頻度(クラウドの自動バックアップで対応可)
・保管期限と廃棄(削除)のタイミング

このルール文書自体も電子化して社内の共有フォルダに置いておけば、誰でも確認できる状態になります。稟議や承認フローもあわせてデジタル化したい場合は、社内承認フロー自動化ガイドも参照してください。

議事録電子化にかかるコストの目安

執筆時点(2026年7月)の費用相場を示します。

ツール・方法 初期費用 月額費用(税込目安) 備考
Microsoft 365 Business Basic 0円 ¥748/ユーザー 10名の場合7,480円/月。SharePoint+OneDriveで管理
Google Workspace Business Starter 0円 ¥748/ユーザー 10名の場合7,480円/月。Google Driveで管理
クラウドサイン(電子署名追加) 0円 ¥10,780~(送信数による) 議事録への電子署名をクラウドサインで実施する場合
方法B(スキャン保管のみ) スキャナー費用のみ 実質0円(既存クラウド利用) M365やGoogle Workspaceが既にあれば追加費用ゼロ

すでにMicrosoft 365またはGoogle Workspaceを導入している会社であれば、ツール追加費用ゼロで議事録電子化を始められます。まずは既存のクラウドツールを活用した方法B(スキャン保管)から始め、役員の電子署名が必要になった段階でサービスを追加するのが、最もリスクが低いアプローチです。

よくある失敗と回避策

失敗1: フォルダ構造が複雑になりすぎて誰もわからなくなる
「完璧なフォルダ設計」を目指して階層を深くしすぎると、担当者が変わったときに誰も探せなくなります。「会議種別 > 年度」の2階層で十分です。ファイル名に年月日を入れれば、日付順で自動的に並びます。

失敗2: アクセス権限を設定せずに全社員が閲覧できる状態にしてしまう
取締役会議事録は機密情報を含む場合があります。フォルダの閲覧権限は「役員と担当者のみ」に絞り、編集権限はさらに担当者のみに制限しましょう。退職者のアクセス権の削除も必ず行います。

失敗3: クラウドの誤削除リスクを過小評価する
クラウドストレージはデータが保護されますが、誤削除のリスクはゼロではありません。重要な議事録は別のクラウドサービスにも定期的にバックアップするか、クラウドの「ごみ箱保持期間」の設定を確認しておきましょう。

失敗4: 過去の紙の議事録をそのまま放置して二重管理になる
電子化を始めた時点からは新規分を電子管理し、過去の紙は「保管期限まで紙のまま管理する」か「まとめてスキャンしてデジタル化する」かを早めに決めておきましょう。中途半端な状態が続くと管理が二重になります。

まとめ

中小企業の議事録電子化は、法的要件を満たしながら進められます。ポイントは次のとおりです。

・会社法はすでに電子的保管を認めている(改ざん困難な形式での保管が条件)
・既存のMicrosoft 365またはGoogle Workspaceを使えば追加コストゼロで始められる
・フォルダ構造はシンプルに「会議種別 > 年度」の2階層が管理しやすい
・電子署名を導入すれば完全ペーパーレスを実現できるが、スキャン保管から始めるのもあり
・月8時間の印刷・製本・ファイリング作業を削減でき、検索・共有も格段に楽になる

まずは現在の議事録管理フローを1枚の紙に書き出すところから始めてみてください。どの作業に時間がかかっているかが見えてきたとき、電子化の優先順位が自然に決まります。

ペーパーレス化を会社全体に広げたい場合は、中小企業のペーパーレス化の始め方もあわせてご覧ください。

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