「うちの社員、一日何時間を何の仕事に使っているんだろう」——そう思ったことはありませんか。
月末になると総務担当者が各部署に「今月の工数報告を提出してください」とメールを送り、Excelシートを集め、手入力で集計する。このやり取りだけで毎月10時間以上を消費している企業は少なくありません。
しかも集めたデータを見ても「誰が何をやっているか」がざっくりとしかわからず、次の見積もりに活かせない。気づいたら赤字プロジェクトになっていた——そんな経験をお持ちの経営者も多いはずです。
この記事では、タイムトラッキングツール(工数自動記録ツール)について、従業員10~100名規模の中小企業向けにわかりやすく解説します。主要ツールの比較・費用・導入手順まで、これ一本で把握できます。
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タイムトラッキングツールとは?
タイムトラッキングツールとは、社員が「どの仕事に何時間費やしたか」をボタン一つで記録・集計できるクラウドサービスです。
従来の「タイムシートに手書き」や「Excelに自分で入力」とは根本的に異なります。スマートフォンやパソコンで業務開始時にスタートボタンを押すだけで、自動的に時間が記録されます。
| 項目 | タイムシート手書き(従来) | タイムトラッキングツール |
|---|---|---|
| 記録方法 | 月末に記憶で書く(正確性に欠ける) | 業務開始時にボタンを押すだけ |
| 集計作業 | 担当者が手作業で集計(月8~15時間) | クラウドが自動集計(リアルタイム) |
| データ精度 | 記憶頼りで曖昧 | 実測値(±5分以内) |
| プロジェクト別管理 | 後からの仕分けが困難 | プロジェクト・タグで即時分類 |
| レポート出力 | 担当者が別途Excelで作成 | ワンクリックでPDF/CSV出力 |
経営者が「どの案件が利益を生んでいるか」「どの業務が想定より時間がかかっているか」をリアルタイムで把握できるようになります。
導入のメリット(数字で示すROI)
タイムトラッキングツールを導入した中小企業では、主に以下の効果が見込めます。
1. 月次集計作業を月8~10時間削減できる
30名規模の企業では、月末の工数集計だけで総務担当者が8~10時間を費やすのが一般的です。タイムトラッキングツールはクラウド上でリアルタイムに集計されるため、月末の作業が「確認と出力」だけになります。
2. 見積もり精度が向上して赤字案件が減る
「前回の同様の仕事で実際に何時間かかったか」というデータが蓄積されます。次回の見積もり時に過去の実績値をもとに作成できるため、「思ったより時間がかかって赤字になった」という事態を防げます。
3. 残業の原因が特定できる
「なぜ毎月残業が発生するのか」の原因を特定できます。特定の担当者や特定の業務に工数が集中していることが可視化され、業務改善の優先順位が明確になります。
4. テレワーク管理が楽になる
在宅勤務中の社員が「今日は何をしているか」をタスク単位で把握できます。管理職が毎日報告を求める手間がなくなり、信頼ベースのリモートワーク管理が実現します。
主要3ツールの比較
中小企業に向いているタイムトラッキングツールを3種類ご紹介します。
1. toggl Track(トグルトラック)
世界で最も使われているタイムトラッキングツールの一つです。シンプルさが最大の特長で、初日から社員全員が迷わず使えます。
・無料プラン: 5名まで無料(主要機能は利用可能)
・Starter: $10/ユーザー/月(レポート機能強化・請求書管理)
・Premium: $20/ユーザー/月(工数予算管理・高度なレポート)
・日本語対応: あり(アプリ・Web版とも対応)
・連携アプリ: Google Calendar、Asana、Slack等100以上
まず試してみるならtoggl Trackがおすすめです。5名以下なら完全無料で本格的な工数管理を体験できます。
2. Clockify(クロッキファイ)
ユーザー数に関係なく無料で使える点が最大の魅力です。基本的な工数記録・集計・レポート機能は無料プランでほぼカバーできるため、コストを抑えたい企業に向いています。
・無料プラン: ユーザー数無制限(基本機能すべて利用可)
・Basic: $3.99/ユーザー/月(残業管理・アラート機能追加)
・Standard: $5.49/ユーザー/月(有給休暇管理・請求書機能)
・日本語対応: あり(Web版・アプリ版)
・連携アプリ: Jira、Trello、Google Calendar等
従業員30名規模で全員に使わせたい場合、無料プランのClockifyなら初期コストゼロで導入できます。
3. TimeCamp(タイムキャンプ)
PCで開いているアプリやウェブサイトを自動検出し、「どのソフトで何時間作業したか」を自動記録できる機能が特長です。社員がボタンを押し忘れてもある程度データが取れます。
・無料プラン: ユーザー数無制限(基本機能)
・Starter: $2.99/ユーザー/月(プロジェクト予算管理)
・Premium: $4.99/ユーザー/月(請求書・詳細レポート)
・日本語対応: 部分対応(Web版は英語主体)
・特長: PC上のアプリ・ブラウザ使用状況の自動追跡
「社員がボタンを押してくれるか不安」という場合は、自動追跡機能のあるTimeCampが安心です。
| ツール | 無料プラン | 有料最安(税別) | 日本語 | おすすめ対象 |
|---|---|---|---|---|
| toggl Track | 5名まで | $10/ユーザー/月 | ◎ | 使いやすさ重視・少人数スタート |
| Clockify | 無制限 | $3.99/ユーザー/月 | ◎ | コスト重視・全社員に一括展開 |
| TimeCamp | 無制限 | $2.99/ユーザー/月 | △ | 自動追跡重視・エンジニア系業務 |
(執筆時点: 2026年9月。料金は為替変動により変わる場合があります。)
具体的な導入手順
1. 管理者アカウントを作成する
まずは経営者または総務担当者が管理者としてアカウントを作成します。toggl TrackもClockifyも、メールアドレスとパスワードだけで5分以内に登録できます。無料プランでまず自分一人で使ってみることをおすすめします。
2. プロジェクト(案件・業務)を登録する
自社のプロジェクトや業務カテゴリをツール内に登録します。最初は「営業活動」「社内会議」「A社案件」「B社案件」といったシンプルな分類で構いません。細かすぎると社員が入力を面倒に感じるため、5~10項目から始めるのがコツです。
3. 社員アカウントを招待する
管理画面から社員のメールアドレスを入力して招待するだけです。社員はメールに届いたリンクをクリックし、自分のパスワードを設定すれば使用開始できます。アプリのインストールは任意で、Web版だけでも運用できます。
4. 1週間のパイロット運用を行う
全社一斉展開より、まず特定の部署や3~5名で1週間試してみることをおすすめします。「押し忘れが多い」「プロジェクト分類が細かすぎた」など、実際に使ってみてわかる問題を先に洗い出せます。
5. レポートで振り返りをして全社展開する
1週間のデータをもとにレポートを確認します。「どの案件に時間がかかっているか」「残業している社員は誰か」が一目でわかります。問題なければ全社に展開し、月末レポートの運用ルールを決めます。
工数データが蓄積されると、プロジェクト原価管理との連携も視野に入ってきます。タイムトラッキングで得た工数実績をプロジェクト別の収支計算に活用することで、どの案件が利益を生み、どの案件がコスト超過しているかが明確になります。
コストと補助金
【コスト】従業員規模別の費用目安
| 従業員規模 | Clockify(無料プラン) | TimeCamp Starter($2.99/人) | toggl Track Starter($10/人) |
|---|---|---|---|
| 10名 | ¥0/月 | 約¥4,500/月 | 約¥15,000/月 |
| 30名 | ¥0/月 | 約¥13,500/月 | 約¥45,000/月 |
| 50名 | ¥0/月 | 約¥22,500/月 | 約¥75,000/月 |
(¥150/ドルで計算。執筆時点: 2026年9月。)
Clockifyを利用すれば、50名規模でも月額¥0で工数管理を始められます。まずは無料ツールでデータ収集の習慣をつけ、必要性が確認できてから有料プランへ移行するという進め方が現実的です。
【補助金】IT導入補助金の対象になるか
タイムトラッキングツール単体は、IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)の対象外になるケースがあります。補助金の対象が「会計ソフト・受発注・決済・EC」に定められているためです。
ただし、タイムトラッキング機能を含む「勤怠管理システム」や「プロジェクト管理ツール」としてITツール登録されているベンダーの場合は対象になることがあります。導入を検討する際は、IT導入支援事業者(登録ITベンダー)に確認することをおすすめします。
よくある失敗と回避策
失敗1: 社員が押し忘れてデータが埋まらない
最初の2~3週間は記録の押し忘れが多いです。回避策: 毎朝のミーティングで「今日やること」をツールに入力する習慣をつける。Slackなどのビジネスチャットにリマインダーを設定して、昼と夕方に「記録確認」を自動通知するだけでも大きく改善します。
失敗2: 分類が細かすぎて入力が面倒になる
プロジェクトやタグを最初から細かく設定しすぎると、社員が面倒に感じて使われなくなります。回避策: まずは「案件名(A社・B社)」と「社内業務(会議・管理・営業)」の2軸だけで始める。3カ月後に使い勝手を見ながら少しずつ細分化するのがコツです。
失敗3: データを集めても経営に活かさない
「毎月データを集めているが、誰も見ていない」という状態では意味がありません。回避策: 月1回の経営会議でタイムトラッキングレポートを必ず議題に入れる。「A社案件は予算の2倍の工数がかかった」「営業会議が月30時間を占めている」という具体的な数字を経営判断に活かすことで、ツール導入の効果が出ます。
工数データを月次レポートに自動反映する仕組みに発展させると、さらに効果的です。詳しくは「中小企業の月次レポート自動化ガイド」をご覧ください。
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本記事のまとめ
タイムトラッキングツールを導入することで、以下が実現できます。
・月末の工数集計作業を月8~10時間削減できる
・見積もり精度が向上して赤字案件のリスクが下がる
・テレワーク中の社員の稼働状況が報告書なしで把握できる
・どの業務・案件が利益を生んでいるかが数字でわかる
まず試すなら、無料で始められるClockifyがおすすめです。人数無制限で基本機能を無料で使えるため、「まずデータを集めてみる」フェーズにはコストがかかりません。
工数の見える化は、DXの「現状把握」の最初の一歩でもあります。詳しくは「中小企業のDXで最初にやる「見える化」入門」もあわせてご覧ください。
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