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中小企業の安全衛生・労務書類ペーパーレス化ガイド|健康診断記録・安全教育記録・労働者名簿を電子化して月8時間削減する方法

「健康診断の個人票、どこに保管したっけ?」——年に一度の労働局の調査や社会保険の手続きのたびに、紙書類を探し回る。従業員30名規模でも、健康診断記録・安全教育記録・労働者名簿といった法定保存書類は何十冊ものバインダーに膨らみ、総務担当者の管理工数だけで月8時間を超えることも珍しくありません。

この記事では、中小企業が抱える安全衛生・労務書類のペーパーレス化について、対象書類の洗い出しから電子化ツールの選び方、法的要件の注意点まで、従業員10~100名規模の企業向けにわかりやすく解説します。

目次

安全衛生・労務書類とは?電子化が求められる背景

中小企業が法律上の保存義務を負う書類は、大きく「労務書類」と「安全衛生書類」の2種類に分かれます。総務・人事担当者が日常的に管理しながらも、電子化が後回しになりやすい領域です。

主な対象書類と保存期間は次の通りです(2026年7月時点)。

書類の種類 根拠法令 保存期間
労働者名簿 労働基準法109条 3年(退職等から起算)
賃金台帳 労働基準法108条・109条 3年
出勤簿・タイムカード 労働基準法109条 3年
健康診断個人票(一般) 労働安全衛生規則51条 5年
衛生委員会の議事録 労働安全衛生規則23条 3年
安全衛生教育の実施記録 実務上の慣行・社内規定 3年保存が目安

従業員が増えるほど書類の量は比例して増加します。紙のまま管理を続けると、棚や書庫のスペース、ファイリング・検索・廃棄の手間が積み重なり、年々コストが上がる構造になっています。

また、2022年の電子帳簿保存法の改正以降、電子的に作成・受領した書類を紙に印刷して保存することが原則禁止されました。クラウド上で受け取った健康診断の結果通知や安全教育の修了証明を印刷している会社は、法対応の見直しが必要です。

電子帳簿保存法の詳細な対応手順については、中小企業の電子帳簿保存法対応ガイドもあわせてご確認ください。

電子化で得られるメリット(ROIを数字で示す)

安全衛生・労務書類を電子化すると、主に次の3つの効果が得られます。

管理工数の削減: バインダーへのファイリング・書類の検索・廃棄処理の手間がなくなり、従業員30名規模で月5~8時間の削減が見込めます。
書庫スペースの解放: 5年分の健康診断票・3年分の労務書類は、ファイルボックス換算で数十冊分。電子化でオフィスの棚を丸ごと空けられます。
調査・監査対応の迅速化: 労働局の立入調査や社労士への相談時に、担当者が数分でデータを提出できるようになります。

項目 電子化前 電子化後
健康診断票の保管・検索 月2時間(紙ファイルを目視検索) 月10分(システム内で氏名検索)
安全教育記録の整理 月1.5時間(署名収集・綴じ込み) 月20分(電子記録を一括管理)
労働者名簿の更新 月1時間(手書き修正・複写) 月5分(人事システムから自動反映)
書類廃棄処理(年次) 年8時間(シュレッダー・廃棄証明) 年1時間(システム上で削除)

年間を通じると、削減効果は管理工数だけで約100時間(月8時間×12か月+廃棄処理)に達します。時給換算2,000円として、年間20万円相当のコスト削減です。

具体的な進め方(ステップバイステップ)

1. 対象書類と保存期間を書き出す

まずは自社に存在する書類を全て棚卸しします。総務・人事担当者が保管しているファイル一覧を作成し、上の保存期間テーブルと照らし合わせて、すでに廃棄できる書類を特定します。

棚卸しのポイントは次の3点です。

紙で受領している書類: 健康診断機関から紙で届く個人票など、外部から来る紙書類はスキャン(PDF化)して電子保存に切り替えます。
社内で作成している書類: 安全教育の出席記録、衛生委員会の議事録など。作成方法をデジタルツールに変更するだけでペーパーレスになります。
電子で受領しているのに印刷している書類: 電子帳簿保存法の要件に従い、電子のまま保存する運用に切り替えます。

2. 電子化ツールを選定する

安全衛生・労務書類のペーパーレス化には、主に次の2つのアプローチがあります。

労務管理クラウドを活用する: SmartHRやfreee人事労務などのクラウド型労務管理ツールは、労働者名簿・賃金台帳・健康診断管理機能を一体で持ちます。人事データと連動するため、退職者が出ると名簿が自動更新されるのが強みです。
文書管理システム+スキャナーで対応する: 紙で届く健康診断個人票などは、複合機のスキャン機能でPDF化し、クラウドストレージや文書管理システムに格納します。既存ツールで対応できるため、初期コストを抑えられます。

従業員30名以上で法定書類の種類が多い場合は、SmartHR導入ガイドで詳しく紹介している労務管理クラウドの活用を検討する価値があります。書類の種類が少なく、費用を抑えたい場合は文書管理システム+スキャナーの組み合わせが現実的です。

3. データ化と保管設定を行う

ツールが決まったら、次の手順で移行を進めます。

新規書類は即日デジタルへ: 今月以降に発生する書類から電子保存に切り替えます。過去の紙書類は保存期限が切れたものから廃棄し、必要なものだけをスキャンします。
フォルダ設計・ファイル命名規則を決める: 「/安全衛生/健康診断/2026年度/個人票/」のように年度・種別で分類し、氏名や日付をファイル名に含めるルールを作ります。
アクセス権を設定する: 健康診断個人票はプライバシー情報のため、閲覧できるのを総務担当者と経営者に限定します。クラウドストレージのフォルダ権限設定で対応できます。
バックアップ経路を確保する: 法定書類を電子で管理する以上、クラウドの自動バックアップとは別に、定期的な外部ストレージへのエクスポートも検討します。

社会保険・雇用保険の届出など行政手続きをオンライン化する場合は、e-Gov電子申請ガイドが参考になります。

また、出勤簿・タイムカードの電子化については勤怠管理ペーパーレス化ガイドで詳しく解説しています。

かかるコストと使える補助金

電子化にかかる費用は、選ぶツールと規模によって大きく異なります(以下は2026年7月時点・税込)。

アプローチ 費用目安 従業員30名の場合
SmartHR(労務管理クラウド) 月額400円~/ユーザー 約12,000円/月
クラウドストレージ(Box/OneDriveなど) 月額700~1,500円/ユーザー 21,000~45,000円/月
複合機スキャン(既存機利用) 追加費用なし
文書管理システム(中堅向け) 月額2万~5万円(定額) 20,000~50,000円/月

小規模から始める場合、既存のMicrosoft 365やGoogle WorkspaceのクラウドストレージとスキャナーだけでもPDF管理は実現できます。追加費用ゼロで始められる点が最大のメリットです。

補助金の活用: IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)は、会計ソフトや労務管理ツールが対象になる場合があります。安全衛生・労務書類管理機能を持つSaaSツールを導入するなら、申請を検討してみてください。補助率は最大3/4(中小企業・小規模事業者)です。申請要件・時期は公募回ごとに変わるため、執筆時点(2026年7月)の情報を必ず公式サイトでご確認ください。

よくある失敗と回避策

失敗1: スキャンして終わりにしてしまう: PDFを共有フォルダに入れるだけでは、氏名・年度での検索ができず、結局「探せない書類」になります。ファイル命名規則とフォルダ構造を最初に設計してから電子化を開始しましょう。

失敗2: 過去書類の一括スキャンに時間をかけすぎる: 保存期限切れを確認せず全部スキャンしようとすると、作業量が膨大になります。今後3年分だけを対象にし、それ以前の書類は廃棄処理してから着手するのが現実的です。

失敗3: アクセス権を設定しない: 健康診断の個人情報が社内全員に見える状態にならないよう、フォルダごとのアクセス権設定は必須です。クラウドストレージの権限設定は導入直後に必ず完了させましょう。

失敗4: 電子化したことを社内に伝えない: 担当者だけがシステムを知っていて、異動・退職後に引き継ぎが困難になるケースがあります。マニュアルを1枚作成し、管理職にも場所と操作方法を共有しておきましょう。

セキュリティ面では、個人情報を含む労務書類のクラウド管理には適切なアクセス制御が不可欠です。外部からの不正アクセス対策については、姉妹サイトセキュリティマスターズ.TOKYOでも詳しく解説しています。

本記事のまとめ

安全衛生・労務書類のペーパーレス化は、特別なITスキルがなくても取り組める業務改善です。ポイントをまとめます。

・健康診断個人票(5年)・労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(3年)など、書類ごとに保存期間が異なる
・電子帳簿保存法の改正で、電子受領した書類を印刷して保存することは原則禁止
・労務管理クラウド(SmartHRなど)か、文書管理システム+スキャナーの2択で選ぶ
・フォルダ構造・ファイル命名規則・アクセス権設定を最初に決めてから移行する
・従業員30名で月5~8時間、年間100時間以上の管理工数削減が期待できる

まずは「今月発生する書類からデジタルへ」という小さな一歩から始めることをおすすめします。過去の紙書類を全部スキャンしようとすると挫折しやすいため、新規分から電子化し、紙の在庫を徐々に減らしていくアプローチが長続きします。

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