「毎月の経理作業に何時間かかっていますか?」手入力での仕訳、紙の領収書の整理、Excelでの集計。従業員10〜50名規模の中小企業では、経理担当者が月に30〜40時間をこうした作業に費やしているケースが珍しくありません。
この記事では、クラウド会計ソフトの導入について、freee・マネーフォワード・弥生オンラインの3大サービスを比較しながら、従業員10〜100名規模の企業向けにわかりやすく解説します。導入メリット、具体的な移行手順、コストと補助金情報まで、検討に必要な情報をまとめました。

クラウド会計ソフトとは?インストール型との違い
クラウド会計ソフトとは、インターネット経由で利用する会計ソフトのことです。従来のインストール型(パソコンにソフトをインストールして使うタイプ)と異なり、ブラウザがあればどこからでも操作できます。
従来型とクラウド型の違いを整理します。
| 項目 | インストール型 | クラウド型 |
|---|---|---|
| 利用場所 | インストールしたパソコンのみ | インターネットがあればどこでも |
| データ保存先 | パソコン内部 | クラウド上(自動バックアップ付き) |
| バージョンアップ | 年1回の有料アップデートが必要 | 自動で常に最新版 |
| 法令対応 | アップデートしないと未対応のまま | 税制改正・インボイス制度に自動対応 |
| 銀行口座連携 | 手動で明細を入力 | 自動で取引データを取得 |
| 複数人での利用 | 追加ライセンスが必要 | プランに応じて複数ユーザーで利用可能 |
中小企業にとって最大のメリットは、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、仕訳を自動生成してくれることです。手入力の作業が大幅に減るため、経理担当者の負担を月20〜30時間削減できるケースが多くあります。
導入のメリット(数字で示すROI)
1. 経理作業を月20〜30時間削減できる
銀行口座やクレジットカードの取引データを自動取得し、AI(人工知能)が仕訳候補を提案してくれます。従業員30名規模の企業であれば、月に200〜300件ある取引の大半を自動処理できます。手入力していた時間がそのまま浮くため、経理担当者は「入力作業」から「数字を読んで判断する仕事」にシフトできます。
2. 請求書・領収書のペーパーレス化が同時に進む
クラウド会計ソフトには、領収書や請求書をスマートフォンで撮影してデータ化する機能が標準搭載されています。電子帳簿保存法にも対応しているため、紙の原本を保管するスペースや管理コストも削減できます。キャビネット1〜2台分のスペースが不要になる企業も少なくありません。
3. 月次決算のスピードが2週間から3日に短縮
取引データが日々自動で取り込まれるため、月末にまとめて入力する必要がなくなります。「先月の数字がわかるのは翌月の15日」という状況から、「翌月3日には速報値が見られる」状態に変わります。経営判断のスピードが格段に上がるため、資金繰りの改善にも直結します。
freee・マネーフォワード・弥生オンラインを比較する
中小企業向けクラウド会計ソフトの3大サービスを、機能・料金・特徴で比較します。
| 項目 | freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 | 弥生会計オンライン |
|---|---|---|---|
| 月額(税抜) | ¥2,680〜(スタンダード・年払い時) | ¥2,980〜(スモールビジネス・年払い時) | ¥2,166〜(ベーシック・年払い時) |
| 年額(税抜) | ¥32,160〜 | ¥35,760〜 | ¥26,000〜 |
| 銀行口座自動連携 | 対応(約3,200行) | 対応(約2,400行) | 対応(約1,400行) |
| 電子帳簿保存法対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| インボイス制度対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| 給与計算連携 | freee人事労務と連携 | MFクラウド給与と連携 | 弥生給与と連携 |
| 操作のしやすさ | 簿記知識がなくても使える画面設計 | 簿記の基本知識があると使いやすい | 従来の会計ソフトに近い操作感 |
| サポート | チャット・メール・電話(プランにより異なる) | チャット・メール | 電話・メール・チャット |
※ 表示価格はすべて税抜です。別途消費税がかかります。料金は執筆時点(2026年3月)の情報です。最新の料金は各サービスの公式サイトをご確認ください。プランによって利用できる機能が異なるため、無料トライアルで実際に操作することをおすすめします。
選び方の目安:
・経理専任者がいない小規模企業(10名以下): freee会計がおすすめ。簿記の知識がなくても「取引」ベースで直感的に入力でき、確定申告までワンストップで対応できます
・経理担当者がいて仕訳入力に慣れている企業: マネーフォワード クラウド会計が向いています。従来の仕訳形式で入力でき、給与・経費精算・請求書との連携も充実しています
・弥生会計(インストール型)から移行したい企業: 弥生会計オンラインが最もスムーズ。データ移行ツールが用意されており、操作感も従来の弥生に近いため、経理担当者の学習コストが最小限で済みます
具体的な移行手順(5ステップ)
1. 現在の会計データを整理する
移行前に、現在使っている会計ソフトやExcelのデータを整理します。具体的には「勘定科目の一覧」「取引先マスタ」「直近1〜2年の仕訳データ」をCSVで出力しておきましょう。この準備をしておくと、クラウド会計ソフトへのデータ移行がスムーズに進みます。
2. 無料トライアルで操作感を確認する
freee・マネーフォワード・弥生のいずれも、無料トライアル期間を設けています。実際に銀行口座を連携し、自動仕訳の精度や操作画面の使いやすさを確認しましょう。トライアル期間中に経理担当者と一緒に触ってみて、「これなら毎日使える」と感じるサービスを選ぶのが失敗しないコツです。
3. 銀行口座・クレジットカードを連携する
利用するサービスが決まったら、法人口座と法人カードを連携設定します。設定自体は10〜15分で完了します。連携後は過去数か月分の取引データが自動で取り込まれるため、初期の仕訳登録もまとめて行えます。
4. 顧問税理士と共有設定を行う
クラウド会計ソフトの大きなメリットの一つが、顧問税理士とのリアルタイム共有です。税理士にも閲覧・編集権限を付与すれば、毎月のデータを郵送したりUSBで渡したりする必要がなくなります。freee・マネーフォワード・弥生のいずれも税理士向けの無料プランを用意しているため、顧問税理士に追加費用はかかりません。
5. 並行運用1か月で精度を確認する
いきなり全面切り替えはリスクがあるため、最初の1か月は従来の方法とクラウド会計ソフトを並行運用します。月末に両方の数字を突合し、差異がないことを確認してから、翌月以降はクラウドのみに切り替えます。この1か月の手間は、その後何年も続く経理業務の効率化を考えれば十分に価値のある投資です。
かかるコストと使える補助金
従業員30名の企業がfreee会計スタンダードプランを導入した場合のコストを試算します。
| 費目 | 金額(税抜) |
|---|---|
| 年間利用料 | ¥32,160/年 |
| データ移行作業(自社対応の場合) | ¥0 |
| データ移行作業(外部委託の場合) | ¥50,000〜200,000(一括) |
| 従来の会計ソフト保守費用(削減分) | -¥30,000〜50,000/年 |
※ 料金は執筆時点(2026年3月)の情報です。
クラウド会計ソフトは基本的に「1事業所あたり」の料金体系のため、従業員数が増えても月額料金は変わりません(ユーザー追加は上位プランで対応)。従来のインストール型で毎年かかっていたバージョンアップ費用(年1〜3万円程度)が不要になる点もメリットです。
【補助金】IT導入補助金の活用
クラウド会計ソフトの導入には、IT導入補助金が活用できる可能性があります。freee・マネーフォワード・弥生はいずれもIT導入補助金の対象ツールとして登録実績があります。通常枠であれば補助率1/2以内、補助額は最大450万円です(2025年度公募の実績値。2026年度の公募要領は公開後にご確認ください)。
クラウド会計ソフト単体では補助額が小さくなりがちですが、給与計算・経費精算・請求書発行などの関連サービスをまとめて導入すると、補助金の効果を最大化できます。申請にはIT導入支援事業者との連携が必要なため、まずは各サービスの公式サイトから補助金対応の窓口に問い合わせるのが確実です。
よくある失敗と回避策
失敗1: 顧問税理士に相談せずに導入する
「クラウド会計ソフトを入れたのに、税理士が対応していなかった」というケースがあります。税理士によって対応しているソフトが異なるため、導入前に必ず顧問税理士に相談しましょう。最近はfreee・マネーフォワード・弥生のいずれかに対応している税理士事務所が大半ですが、確認を怠ると二度手間になります。
失敗2: 自動仕訳を確認せずに放置する
銀行口座を連携すると取引データが自動で取り込まれますが、AIが提案する仕訳が必ず正しいとは限りません。特に導入初期は学習データが少ないため、仕訳の精度が70〜80%程度にとどまることがあります。最初の1〜2か月は毎日10分程度、自動仕訳の内容を確認・修正する時間を確保しましょう。修正を重ねるうちにAIの精度が上がり、3か月目以降は95%以上の精度になるのが一般的です。
失敗3: 従来のExcel管理を並行して続ける
「クラウド会計は入れたけど、念のためExcelでも管理している」という状態は、二重作業で工数が増えるだけです。並行運用は最初の1か月だけに限定し、精度を確認できたらExcel管理を完全にやめる判断をしましょう。
本記事のまとめ
クラウド会計ソフトを導入することで、経理業務の自動化・ペーパーレス化・月次決算の高速化を同時に実現できます。
・手入力からの解放: 銀行口座連携で仕訳を自動生成、月20〜30時間の削減が可能
・3大サービスの選び方: 簿記知識がなければfreee、仕訳に慣れていればマネーフォワード、弥生からの移行なら弥生オンライン
・移行は5ステップ: データ整理→トライアル→口座連携→税理士共有→並行運用
・コスト: 年額2.6〜3.6万円程度。従来のソフト保守費・バージョンアップ費を考慮すると実質負担は軽い
・補助金: IT導入補助金で導入コストの最大1/2を補助できる可能性あり
まずは無料トライアルで銀行口座を1つ連携し、自動仕訳の便利さを体感してみてください。
経理業務のクラウド化、次の一歩を踏み出しませんか?
クラウド会計ソフトの選び方や導入後の活用法をもっと詳しく知りたい方へ。
中小企業のDXを身近な業務改善から始めたい方へ、メルマガで実践的なDX推進ノウハウをお届けしています。
関連記事
中小企業のクラウド在庫管理システム導入ガイド|Excelから脱却して在庫ロスと発注ミスを月15時間削減する方法


コメント