中小企業のクラウドPBX導入ガイド|ビジネスフォンのクラウド化で通信費を年間40万円削減

Cloud Usage

「電話の取り次ぎに毎日30分以上かかっている」「ビジネスフォンのリース契約が切れるけど、更新すると100万円以上かかる」——こうした悩みを持つ中小企業の経営者は少なくありません。

従来のビジネスフォンは、主装置(PBX)と呼ばれる専用機器をオフィスに設置し、固定電話回線を引いて使うものでした。導入に100万〜300万円、毎月の回線費用もかかる上に、拠点を増やすたびに工事が必要です。

この記事では、従来のビジネスフォンをクラウドに置き換える「クラウドPBX」について、仕組みから導入手順、コスト削減効果まで具体的に解説します。従業員10〜50名規模の中小企業が、通信費を年間40万円以上削減しながら電話業務を効率化する方法がわかります。

中小企業のクラウドPBX導入ガイド|ビジネスフォンのクラウド化で通信費を年間40万円削減

クラウドPBXとは?——インターネット経由で使えるビジネスフォン

クラウドPBX(Private Branch Exchange=構内交換機)とは、これまでオフィスに設置していた電話の交換機をクラウド(インターネット上のサーバー)に移したサービスです。

スマートフォンやパソコンに専用アプリを入れるだけで、会社の代表番号で発着信できるようになります。物理的な電話機や主装置を買う必要がなく、インターネット環境さえあればどこでも使えるのが最大の特徴です。

従来のビジネスフォンとクラウドPBXの違いを整理すると、次のとおりです。

比較項目 従来のビジネスフォン クラウドPBX
交換機の設置場所 オフィス内(主装置) クラウド上(サービス提供会社が管理)
初期費用 100万〜300万円 0円〜5万円程度
月額費用 回線費+保守費で3万〜8万円 1人あたり1,500〜3,000円程度
使える端末 専用電話機のみ スマホ・PC・IP電話機
拠点追加 工事が必要(数十万円) アカウント追加のみ(即日可能)
テレワーク対応 転送設定が必要(別途費用) アプリで自宅からそのまま利用可

導入のメリット——通信費の削減だけではない3つの効果

クラウドPBXの導入効果は、通信費の削減にとどまりません。実際に導入した中小企業で確認されている3つのメリットを、具体的な数字とともに紹介します。

1. 通信コストの大幅削減——年間40万円以上の節約

従業員30名の企業が従来のビジネスフォンからクラウドPBXに切り替えた場合、コスト削減の目安は次のとおりです。

費目 従来のビジネスフォン クラウドPBX
初期費用(主装置+電話機) 約200万円(リース月3.5万円×60回) 0円〜3万円
月額回線費+保守費 約5万円 約1.5万円
通話料(月間) 約2万円 約0.8万円
月額合計 約10.5万円(リース含む) 約7万円
年間合計 約126万円 約84万円

年間で約42万円の削減になります。リース契約が終了している企業でも、回線費と保守費だけで年間20万円以上の差が出るケースがほとんどです。

2. 電話の取り次ぎ時間を月10時間削減

クラウドPBXでは、着信を担当者のスマートフォンに直接つなげます。「○○さん、2番にお電話です」という取り次ぎが不要になり、1回あたり2〜3分の取り次ぎ時間がなくなります。

1日20件の着信がある企業なら、月に約10時間の取り次ぎ時間を削減できます。総務担当者が電話番から解放されるので、本来の業務に集中できるようになります。

3. テレワーク・外出先でも会社番号で対応

スマートフォンアプリから会社の代表番号で発着信できるため、テレワーク中でも外出先でも、お客様から見れば会社にかけているのと同じです。「折り返します」の伝言が減り、お客様対応のスピードが上がります。

営業担当者が個人の携帯番号を顧客に教える必要もなくなるため、退職時の引き継ぎトラブルも防げます。

中小企業のクラウドPBX導入ガイド|ビジネスフォンのクラウド化で通信費を年間40万円削減 - 解説

クラウドPBX導入の具体的な進め方

1. 現在の電話環境を棚卸しする(1週間)

まず、今の電話環境を整理します。確認するのは次の4点です。

現在の電話番号: 代表番号、部署直通番号、FAX番号を一覧にする
月間の通話量: 発信・着信それぞれの件数と通話時間を電話会社の明細で確認
現在の契約内容: リース残期間、回線契約の解約条件、違約金の有無
電話番号の引き継ぎ: 今の番号をそのまま使いたいかどうか(番号ポータビリティの可否)

特に重要なのが電話番号の引き継ぎです。NTTのアナログ回線で取得した番号であれば、ほとんどのクラウドPBXサービスに引き継げます。ただし、光電話やIP電話(インターネット回線を使った電話サービス)で取得した番号は引き継げない場合があるので、事前にサービス提供会社に確認してください。

2. サービスを比較・選定する(2週間)

主要なクラウドPBXサービスの中から、自社に合ったものを選びます。中小企業でよく使われている3つのサービスを比較します。

サービス名 月額(税込)/1ユーザー 初期費用 特徴
BIZTEL 約2,200円〜 約55,000円〜 国産サービスで日本語サポートが手厚い。CRM連携が豊富
モバビジ 約1,980円〜 0円 NTT回線を利用した高品質な通話。番号引き継ぎに強い
03plus 約1,078円〜 約5,500円 低コストで始められる。FAXのクラウド化にも対応

※料金は執筆時点(2026年4月)の情報です。プランや利用人数によって変動します。

選ぶときのポイントは3つあります。

通話品質: 無料トライアルで実際に通話して確認する。安かろう悪かろうでは業務に支障が出る
番号の引き継ぎ: 既存の電話番号がそのまま使えるか、必ず契約前に確認する
サポート体制: 電話やチャットで日本語サポートを受けられるかどうか。設定変更のたびに英語マニュアルを読むのは現実的ではない

3. 無料トライアルでテストする(2週間)

ほとんどのクラウドPBXサービスは、1〜2週間の無料トライアル期間を用意しています。本契約の前に、必ず以下を確認してください。

通話品質: 社内のWi-Fi環境、外出先の4G/5G環境でそれぞれテスト。途切れや遅延がないか
操作性: ITに詳しくない社員でもアプリを使えるかどうか
着信ルール: 営業時間外の自動応答、部署別の着信振り分けが設定できるか

テストは本番と同じネットワーク環境で行うことが大切です。オフィスのインターネット回線が遅い場合、クラウドPBXの通話品質にも影響します。目安として、1通話あたり100kbps(キロビット毎秒)程度の通信速度があれば問題ありません。従業員30名が同時に通話するケースはまれなので、一般的な法人向け光回線(上下1Gbps)であれば十分です。

4. 導入・切り替えを実施する(1〜2週間)

サービスが決まったら、次の手順で切り替えます。

アカウント作成: 管理者がサービスに申し込み、利用者のアカウントを作成する
番号ポータビリティの申請: 既存番号を引き継ぐ場合は、サービス提供会社経由で手続きする(完了まで1〜2週間)
アプリのインストール: 全社員のスマートフォン・PCにアプリを入れ、ログイン確認する
着信ルールの設定: 代表番号の着信先、営業時間外のアナウンス、転送設定を行う
並行運用: 1週間ほど旧システムと並行運用し、問題がなければ完全切り替え

いきなり全社で切り替えるのではなく、まず管理部門や営業部門など1部署で先行導入して、問題がないことを確認してから全社展開するのがおすすめです。

かかるコストと使える補助金

従業員数別のコスト目安をまとめます。

従業員数 月額費用(税込目安) 年間費用 従来比の年間削減額
10名 約2万〜3万円 約24万〜36万円 約15万〜25万円
30名 約5万〜8万円 約60万〜96万円 約30万〜45万円
50名 約8万〜13万円 約96万〜156万円 約40万〜60万円

初期費用はサービスによって0円〜5万円程度です。従来のビジネスフォンの初期費用(100万〜300万円)と比べると、桁が違います。

IT導入補助金の活用

クラウドPBXは「IT導入補助金」の対象になる場合があります。2025年度(令和7年度)の通常枠では、導入費用の1/2(上限450万円)が補助されます。

対象: 中小企業・小規模事業者
補助率: 1/2以内
補助額: 1プロセス以上で5万〜150万円未満、4プロセス以上で150万〜450万円以下
申請方法: IT導入支援事業者を通じて申請

※2026年度の公募情報は執筆時点(2026年4月)で未発表です。最新情報はIT導入補助金の公式サイトで確認してください。補助金を使う場合は、対象サービスとして登録されているクラウドPBXを選ぶ必要があります。

よくある失敗と回避策

失敗1: 通話品質が悪く、お客様対応に支障が出た

原因の多くは、オフィスのインターネット回線の品質です。特に、マンションタイプの共有回線を使っている場合や、Wi-Fiルーターが古い場合に通話の途切れが起きやすくなります。

回避策: 導入前にインターネット回線の速度テストを行い、上り・下りともに50Mbps以上あることを確認してください。速度が不足している場合は、法人向け光回線への切り替えを先に検討しましょう。また、Wi-Fiルーターは通話用に5GHz帯(電波干渉が少なく通信が安定する周波数帯)を使える機種にすると安定します。

失敗2: 電話番号を引き継げなかった

光電話やIP電話で取得した番号は、クラウドPBXに引き継げないケースがあります。契約してから「番号が変わります」と言われると、名刺やWebサイトの修正、取引先への連絡など、大きな手戻りが発生します。

回避策: サービス選定の段階で、今使っている電話番号が引き継げるかどうかを必ず書面で確認してください。口頭での「たぶん大丈夫です」は信用しないことが重要です。

失敗3: 社員が使いこなせず、結局固定電話に戻した

特に50代以上の社員から「スマホで会社の電話を受けるのは不安」「操作がわからない」という声が上がり、導入が頓挫するケースがあります。

回避策: 導入時に30分程度の操作説明会を開き、「電話を受ける」「電話をかける」「保留・転送する」の3つだけを練習してもらいましょう。マニュアルを配るだけでは読まれません。実際に手を動かす時間を作ることが大切です。

中小企業のクラウドPBX導入ガイド|ビジネスフォンのクラウド化で通信費を年間40万円削減 - まとめ

本記事のまとめ

クラウドPBXは、従来のビジネスフォンをインターネット経由のサービスに置き換えるものです。初期費用を大幅に抑えられるだけでなく、月々の通信費も削減でき、従業員30名の企業で年間約40万円のコスト削減が見込めます。

導入の手順は、電話環境の棚卸し、サービス比較、無料トライアル、切り替えの4ステップです。全体で1〜2か月あれば移行できます。

まずは現在の電話の契約内容と月額費用を確認するところから始めてみてください。「思ったより電話にお金がかかっていた」と気づく経営者は多いものです。

クラウドサービス全般の基礎知識については、姉妹サイトクラウドマスターズ.TOKYOで詳しく解説しています。また、社内のセキュリティ対策と合わせて進めたい方は、セキュリティマスターズ.TOKYOもあわせてご覧ください。

オフィスの電話環境、見直す時期ではありませんか?

クラウドPBXの導入は、通信費の削減だけでなく、テレワーク対応や業務効率化にもつながります。
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