「取引先との注文書はいまだにFAXでやり取りしている」「FAX用紙とインク代が地味に経費を圧迫している」「外出中にFAXが届いても確認できない」——このような悩みを抱えている中小企業の経営者や総務担当者は少なくありません。特に従業員10~100名規模の企業では、FAXがコア業務に組み込まれているため、廃止に踏み切れずにいるケースが多く見られます。
この記事では、中小企業がFAXを廃止してインターネットFAX(クラウドFAX)に移行する具体的な手順とコスト削減効果について、従業員10~100名規模の企業向けにわかりやすく解説します。インターネットFAXとは何かから、サービス選定、取引先への通知方法、移行時の注意点まで、実務担当者がそのまま使える内容にまとめました。
インターネットFAXとは?経営者にわかる言葉で
インターネットFAX(クラウドFAX)とは、専用のFAX機や電話回線を使わず、インターネット経由でFAXの送受信ができるサービスです。受信したFAXは画像(PDF)としてメールに届き、送信もパソコンやスマートフォンからPDFや画像を選んで送るだけで完結します。
従来のFAXとの最大の違いは、紙とインクが原則として不要になることです。紙が必要な書類だけ印刷すればよいため、ペーパーレス化と同時にコスト削減も実現できます。さらに、外出中やテレワーク中でもスマホで受信FAXを確認できるため、「FAXを見るためだけに出社する」という非効率がなくなります。

FAX廃止で得られる導入メリット(数字で示すROI)
FAXを廃止してインターネットFAXに切り替えることで、コストと工数の両面で具体的な効果が期待できます。従業員30名規模の企業を想定した試算では、年間で30万円以上のコスト削減と月15時間の作業時間削減が見込めます。
| 項目 | 従来のFAX | インターネットFAX |
|---|---|---|
| FAX機本体 | ¥80,000~150,000(5~7年で買替) | 不要(¥0) |
| 専用回線料金 | 月¥2,000~3,000 | 不要(¥0) |
| 用紙・インク代 | 月¥3,000~5,000 | 必要分のみ印刷(月¥500程度) |
| サービス利用料 | — | 月¥1,000~4,000 |
| 受信確認の工数 | 月10~15時間(出社・印刷・配布) | 月2~3時間(メールで自動受信) |
| 外出時の対応 | 不可(出社が必要) | スマホで即時確認・返信可能 |
※執筆時点(2026年4月)の一般的な相場です。FAX機の保守料・修理代を含めると、削減効果はさらに大きくなります。
FAX廃止の具体的な進め方(5ステップ)
FAX廃止は「ある日突然やめる」ではなく、段階的に進めるのが現実的です。以下の5ステップで進めれば、取引先との関係を損なわずスムーズに移行できます。
1. 現状のFAX利用状況を棚卸しする
まず1か月間、自社が送受信しているFAXの内容と件数を記録します。「誰から」「何の書類が」「月に何件」届くかを整理することで、移行の難易度が見えてきます。具体的には、注文書・請求書・案内文・申込書などのカテゴリ別に集計するのがおすすめです。
2. インターネットFAXサービスを選定する
サービスは大きく「番号引き継ぎ可」「新規番号のみ」の2タイプに分かれます。長年使ってきた番号を変更したくない場合は、番号ポータビリティ(番号引き継ぎ)に対応したサービスを選びます。代表的なサービスを以下にまとめました。
| サービス名 | 月額(税込) | 番号引き継ぎ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| eFax | ¥1,980~ | 条件付きで対応 | 世界最大手、海外送信に強い |
| InterFAX | ¥1,180~ | 原則新規番号 | シンプル、低価格 |
| jFax | ¥1,089~ | 原則新規番号 | 個人・小規模向け、低価格 |
| BIZ FAX スマートキャスト | ¥3,800~ | NTTコミュニケーションズ提供 | 大量送信向け、信頼性が高い |
※執筆時点(2026年4月)の料金体系です。各社プラン改定があるため、申込前に必ず公式サイトで最新料金を確認してください。
3. 取引先へ移行を通知する
番号を変更する場合は、最低でも1か月前には主要取引先へ通知します。通知方法は「書面(封書またはFAX自身で)」「メール」「電話」の3つを組み合わせるのが鉄則です。特にFAXでの通知は「いままさにFAXを使っている取引先」に確実に届くため、効果的です。
通知文には、新番号・切り替え予定日・問い合わせ窓口の3点を必ず記載します。番号を引き継ぐ場合でも、「FAX対応窓口の運用方法が変わる」旨を周知しておくと混乱を防げます。
4. 既存FAX機と並行運用する
切り替え当日からいきなりFAX機を撤去するのではなく、最低2週間は並行運用します。これにより、取引先からの問い合わせや、通知が届かなかった先からのFAXを取りこぼさずに済みます。並行運用中に新サービスへの送受信件数が9割を超えたら、旧FAX機を停止する目安です。
5. 受信FAXの保管・共有ルールを決める
インターネットFAX移行後は、受信したPDFをどこに保管し、誰がどう確認するかを社内で決めておく必要があります。Google DriveやMicrosoft OneDriveの共有フォルダに自動保存する設定にしておくと、関係者全員がリアルタイムで確認できます。

かかるコストと使える補助金
インターネットFAXの初期費用は¥0~¥5,000程度、月額は¥1,000~¥4,000が相場です。番号引き継ぎを行う場合のみ、別途¥10,000~¥30,000の手数料が発生するサービスもあります。
IT導入補助金2025の対象ツールには、ペーパーレス関連のサービスとして電子契約・文書管理ツールが含まれています。インターネットFAX単体での申請は対象外のケースが多いものの、ワークフロー電子化や文書管理システムとセットで導入すれば対象になることがあります。詳しくは「IT導入補助金2025の申請ガイド」を参照してください。
よくある失敗と回避策
失敗1: 番号変更を周知せず取引先からクレーム
番号変更の通知が一部の取引先にしか届かず、「FAXが送れない」というクレームが発生するケースです。回避策として、過去6か月間に1度でもFAXのやり取りがあった全取引先をリスト化し、漏れなく通知することが重要です。
失敗2: 受信FAXを誰も見ていない
メールでPDFが届くようになったものの、担当者が個人メールに紐付けてしまい、休んだ日に誰も確認できないケースがあります。回避策は、受信用に共有メールアドレス(fax@example.co.jpなど)を作成し、関係者全員に転送設定することです。
失敗3: 月額料金以上の従量課金が発生
多くのインターネットFAXサービスは、月額料金に含まれる送受信枚数を超えると、1枚あたり¥10~¥30の従量課金が発生します。FAX件数が多い企業では、月額が想定の2倍以上になることも。事前にステップ1の棚卸しデータをもとに、適切な料金プランを選ぶことが大切です。
失敗4: 既存FAX機を急に撤去して取引先と連絡が取れなくなる
並行運用期間を設けずにFAX機を撤去すると、通知が届かなかった取引先からの注文を取りこぼします。ステップ4で説明した通り、最低2週間の並行運用を必ず設けてください。

本記事のまとめ
FAX廃止は中小企業のペーパーレス化において、最も投資対効果の高い施策の一つです。月¥1,000~¥4,000のサービス利用料で、年間30万円以上のコスト削減と月15時間の作業時間削減が実現できます。
成功のポイントは「現状棚卸し → サービス選定 → 取引先通知 → 並行運用 → 保管ルール策定」の5ステップを順序通りに進めることです。特に取引先通知と並行運用を丁寧に行うことで、ビジネスへの悪影響を最小限に抑えられます。
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